腎機能が悪い場合における糖尿病治療
慢性腎臓病の評価として、推定GFR値によるステージ分類(1-5)がある。腎機能低下の程度により糖尿病治療も変化させる必要があり、具体的に以下に述べる。
どのステージにおいても、良好な血糖コントロールは1型および2型糖尿病の両者において腎臓病とその進行のリスクを低減する。食前血糖値を90~130mg/dLに、HbA1cを7%未満に保つことが推奨されている。腎機能が低下するとGFRが減少するため、経口血糖降下薬の必要性と投与量を再検討する必要がある。また、それと同時に投与されたインスリンの分解も遅くなるため、必要なインスリンの投与量は少なくなる。
腎機能が障害されていない場合でも2型糖尿病と診断された時点で、高血圧が認められる患者は多い。これはアルブミン尿として現れ、心血管系疾患や腎症発症の強力な予測因子となる。そのためGFR減少よりも先に出現する微量アルブミン尿は、最低1年に1回測定することが推奨されている。降圧治療薬の中では特にACE阻害薬やARBに、腎保護作用がある。
GFRが減少するステージ3、4では慢性腎臓病に伴う臨床症状や検査値異常が顕在化してくる。2型糖尿病の薬物療法において、血糖降下薬としてスルホニル尿素薬とメトホルミンが数十年にわたり使用されているが、どちらも腎臓で排泄されるため、腎機能が障害された患者への使用は望ましくない。副作用として、スルホニル尿素薬では低血糖、メトホルミンでは乳酸アシドーシスが起こりやすくなる。速効型インスリン分泌促進薬であるメグリチニドの1つ、レパグリニドは主に肝臓で代謝され、腎臓で排泄されるのは10%にも満たない。そのため腎機能障害がある患者にも安全に使うことができる。
ステージ5となると、尿毒素が蓄積し、栄養状態、体液・電解質の恒常性が傷害され、最終的に尿毒症性症候群となり、腎代替療法(透析や移植)が開始されなければ致死的となる。透析患者の糖尿病治療における血糖降下薬として、α-GIや速効型インスリン分泌刺激薬のうち、ミチグリニドとレパグリニド、DPP-4阻害薬のビルダグリプチン、アログリプチン、リナグリプチンが使用可能なので、これらを単独または併用して使用していくことになる。ただし、どの薬剤が最善かについてのエビデンスはない。また、2型糖尿病の透析患者においては、血糖降下薬を用いても良好な血糖コントロールが得られないことが多く、その場合はインスリン療法の適応となる。不良なコントロールに置かれた期間がその後の合併症(心血管疾患など)の進行に影響するため、適応となる場合はインスリン療法をなるべく早く導入するべきである。
参考文献
ハリソン内科学第4版
血液透析患者の糖尿病治療ガイド2012 透析会誌 2013;46(3):311-57.
Up to date”Sulfonylureas and meglitinides in the treatment of diabetes mellitus”
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