注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
<腎細胞癌の臨床像について>
腎細胞癌の発生因子は
・喫煙 ・肥満 ・高血圧 ・有機溶媒 ・カドミウム ・アスベスト
といった因子が複合的に作用して発癌のリスクを高めていると考えられている。適度のアルコール摂取は発症を下げるとされている。ただ、これらの生活習慣や環境因子を除外することで発症を抑えられるというエビデンスはまだ得られていない。また透析患者に発生する後天性嚢胞性腎疾患やvon Hippel-Lindau病に高率に合併することからスクリーニングが勧められる。
症候としては古典的三徴といわれる血尿、腹痛、側腹部または腹部の腫瘤が認められることがある。ただこれらの症候がそろうことは10~20%の患者にしか認められない。血尿は40%の患者にみられ、進行癌の場合凝血塊がでてくる多い。
他には 腫瘍随伴症状による発熱:20%の患者にみられ原因不明。夜間盗汗や体重減少を伴うことが多い。
貧血:29~88%の患者さんにみられ、正球性や小球性の場合がある。慢性炎症のような鉄の利用障害によるものと考えられている。
赤血球増加症:赤血球増加症は1~5%にみられ、エリスロポエチンを産生する場合に見られる。
精索静脈瘤:精索静脈瘤には静脈内腫瘍塞栓によるものと、腫瘍そのものによる精巣静脈圧迫によるものの2通りが考えられ、左側に好発。11%の頻度。
下大静脈閉塞症:上記と同様の機序による症状で下腿浮腫、腹水、肝機能不全を起こす。
高カルシウム血症:高カルシウム血症は15%にみられ、悪性腫瘍が産生するPTHrpによる場合と腫瘍の骨転移による場合がある。
非転移性肝機能障害(stuffer症候群):熱、体重減少、易疲労感をおこす。機序としてはGM-CSF、IL-6などのサイトカインによるものと考えられている。頻度はかなり少ないようだが、アルカリフォスファターゼの上昇は21%の患者にみられる。
AAアミロイドーシス:AAアミロイドーシスは3~5%にみられ、体重減少、貧血、浮腫などの症状がみられる。
などが見られることがある。ただ最近では画像診断が発達してきて、他疾患の評価中に偶然発見されることが多い。腎臓の充実性腫瘍は腎細胞癌が圧倒的であり、悪性でないことが確認されるまではすべて悪性腫瘍と考えておくべきである。
腎細胞癌の予後予測因子としてCRPが治療前検査として推奨される。また、術後のCRPが高値のままの患者は予後が有意に不良であるのでstagingに使用するという意見があるが特に転移癌においてエビデンス不足のため、今後の研究が期待される。(1)
<参考文献>(1)Ljungberg B, GrankvistK,RasmusonT.Serum acute phase reactants and prognosis in renal cell carcinoma.Cancer.1995;76(8):1435-9
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