注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
GBS感染による妊婦と児への影響と予防
[疫学]
・妊婦におけるGBS感染症は、尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎、無症候性の細菌尿)、絨毛膜羊膜炎、羊水内の感染症、子宮内膜症、菌血症を引き起こす。CDC surveillance studyの結果では、5~40%の女性が膣または直腸にGBSを保菌しており、培養陽性となった場合、抗菌薬の予防投与が必要である。また、0.12%の妊婦がGBSに感染(血液や尿以外の無菌部位から同定されたGBS感染)しており、この内の約半数では胎児死亡や新生児感染、新生児死亡、流産がみられた。(1999年~2005年のCDC surveillance study)
・乳児のB群レンサ球菌感染は、その発症時期により二種類の病型に大別される。
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感染時期 |
症状 |
早期発症型感染 |
分娩経過中または分娩終了時に母親の産道からの感染 |
呼吸促迫、嗜眠、血圧低下 基本的に全て菌血症になり、肺炎や呼吸促迫症候群(30-50%),髄膜炎(30%) |
後期発症型感染 |
分娩中、または生後母親や職員またはその他の感染源との接触による感染 |
発熱、嗜眠、過敏性、哺乳力減退、痙攣 髄膜炎としての発症が一般的 |
[予防]
新生児感染は母親の産道が感染源となっているため、スクリーニングと抗菌薬療法によるGBSの感染予防努力が必要となる。
スクリーニングとしては、すべての妊婦で35週~37週の内に膣直腸培養検査が行われるのが望ましい。
<分娩時の抗菌薬予防投与>;
GBSは抗菌薬で除去できたとしても、その後再定着している可能性があるため、分娩時での抗菌薬予防投与が必要となる。
・分娩中に38度以上の発熱 ・37週未満の出産 ・破水が18時間以上
・過去に新生児がGBSに感染 ・GBSの細菌尿
これらの条件のいずれかにあてはまる妊婦には、分娩時の抗菌薬予防投与をする必要がある。
過去の出産で新生児がGBS感染した妊婦、妊娠中にGBS細菌尿が認められた妊婦は、スクリーニングを行わずに直接抗菌薬治療に移行してもよい。
<予防薬> 抗菌薬としてはペニシリン、アンピシリン、セファゾリンが最も効果的である。その中でもペニシリンは安価で、副作用が少なくGBSに対して感受性が高いという利点がある。
・ペニシリンGの場合、経静脈的に1回500万単位投与し、その後出産まで4時間毎に250~300万単位投与する。
・アンピシリンの場合、経静脈的にまず2g投与し、その後出産までに4時間毎に1gずつ投与する。
ペニシリン系に対する過敏反応の既往がある場合には、セファゾリンの投与が考慮される。ペニシリン系に対す る遅延型の過敏反応の既往がある場合にはセファゾリンの慎重投与が可能であるが、ペニシリンによる即時型過敏反応の既往がある妊婦には注意が必要である。 セフェム系抗生物質とペニシリン系抗生物質は交差反応性があることが知られているので、過去にペニシリン系抗生物質で過敏症を経験した妊婦は、セフェム系 抗生物質の投与によっても過敏症(筋肉内注射部位の疼痛および静脈内投与後の血栓性静脈炎)を生じるおそれがある。このような妊婦の場合には、クリンダマ イシンやバンコマイシンの投与が考慮される。
参考文献;ハリソン内科学 第3版
Up to date Group B streptococcal infection in pregnant women
(Karen M Puopolo,Lawrence C Madoff,Carol J Baker 2/4,2013)
Chemoprophylaxis for the prevention of neonatal group B streptococcal disease(Carol J Baker 3/1 2013)
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