ハワイ大学の医学教育オフィスが開催するProblem-Based Learning (PBL) Workshopに参加している。神戸大からぼくを入れて3人、琉球大学、浦添総合病院、佐賀、横浜市立医大、浜松医大、それと韓国から3人来ている。
いや、驚いた。
PBLという概念そのものにではない。これはぼくには既知のものだからだ。ハワイ大学のそれは、オーセンティックなPBLよりもずっと実践的で、レクチャーなどとのハイブリッドを行い、親しみやすい構成になっている。それはぼくがやっているTBLに重なる部分も多く、症例を小出しに出しながら議論していく。チューターもアクティブに発言し、質問し、助言する。guided learningという言葉を用いていて、学生放置プレイにしないのがここの特徴みたいだ。ジョークが多く笑いが多かったのも良かった(これは関西でもコピーできる)。イヤらしいPBLオタクもたくさん知っているが、そういうイヤらしさや過度なマニアックさがないのがハワイらしくて好感が持てた。なお、今日のケースでは、検査値はひとつもでなかった。検査を一つも出さずにPBLをできるところが、日本に何ヶ所あるだろうか。日本の多くは検査ずらっと並べて検査の勉強と診断当て物クイズではないだろうか、、、
いろいろ参考になったし、自分のやっている方向性が外れていないという点でreassuringだった(日本で医学教育の話をすると、話がかみ合わんことが多いのでしばしば不安になる)。でも、驚いたのは「そこ」ではない。
驚愕したのは、PBLのデモをやってくれた学生のパフォーマンスだ。4人の「1年生」である。77歳男性、引退した中国人の大工が2週間の頻回な転倒で来院。ここから事実を引き出し、問題点を抽出する。問題点から仮説を生成し、仮説から患者に問うべき質問を考える。めまいはなかったか。動機はしなかったか。基礎疾患は何か。薬は飲んでいなかったか。質問からまた新たな仮説が生成される。既往歴やその他の情報、身体診察所見が提供され、アセスメントとマネジメントが展開される。ここまで1年生がほとんどやってしまった(利尿薬増加のための起立性低血圧プラス飲酒プラス膝関節症などのmultifactorial problemsによる転倒であった)。転倒の鑑別はほとんど網羅していた。拍手喝采である。
聞くと、彼らは、これまでにPBLでケースを18こなしたのだそうだ。確かに、大学生なら18回このセッションをこなせばこのくらいのパフォーマンスができてもよいだろう。日本の医学生でも「同じことをやれば」パフォーマンスは大差ないとぼくは思う。
しかし、今の神大5年生に、PBLを32セッション、1セッション2例として60例以上のPBLをやってきた彼らに、ハワイ大1年生の半分ほどのパフォーマンスが示せるだろうか。はなはだ疑問である。というわけで、神戸大のチュートリアル=PBLの抜本的な改革、改善は必然である。前からそう思っていたが、今日腹の底からそう思った。
というか、神大の初期研修医でも転倒する高齢者の鑑別ちゃんとあげれるかな。というか、うちの内科指導医たちもほとんどかなわないんじゃないだろうか。というか、内科の教授たち、、、うわ、やめろ、なにをするlew./@uraeo332///
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