シンポジウムがあるので、おしゃべりします。「移植前の感染管理」がいただいたお題です。なかなか難しいですね。よかったらおいでくださいませ。
http://www.c-linkage.co.jp/jscrt46/
移植前の感染症対策
医師には各論が好きな人が多い。ネタがマニアックだし、そのほうが知識の披露のやりがいがある。だから、「風邪」の話よりも、Citrobacter koseriとかKudoa septempunctataとかの話をしたがり、Esherichia coliではなく、Esherichia albertiiの話をしてしまう。実際にはE. coliのほうがはるかに実地では意味のある対象にも関わらず。
腎移植後のシャーガス病とか狂犬病とか、リンパ球性脈絡髄膜炎とかのほうが、ネタとしては「セクシー」である。だから、症例報告がNew England Journal of Medicineのような一流誌に紹介される。しかし、一流誌に紹介されるということ「それ自体」が示唆的なのである。そのような事例は極めてまれであり(だからNEJMに載る)、一般的には考えづらいことであり、日常的な懸念対象ではないということである。
「うちの患者は特殊だから」
この一言が、すべてをチャラにしてしまい、思考停止を惹起してしまい、当たり前のことができなくなってしまう。当たり前の一般論こそが大事なのに。各論は、その後でてくるべきものなのに。
腎移植前の感染対策としてまず考えられるのは予防接種だ。しかし、それは「腎移植患者に黄熱病ワクチンは接種可能か」みたいなマニアな話ではない。一般的に普及が不十分な予防接種が問題なのである。インフルエンザや麻疹やB型肝炎の問題なのである。
抗菌薬使用も問題である。肺炎球菌やマイコプラズマの多くはマクロライド耐性化している。日本の肺炎球菌はセフェムには感受性を残しているのにカルバペネムには耐性化していたりする。透析患者の発熱はしばしば心内膜炎が原因だが、これがしばしば見逃されている。血液培養が十全に活用されていないからである。このような奇妙な日常が、真に腎移植患者にとって仇となるのである。
というような問題をシンポジウムでは論じてみたい。本番まで時間があるので、他の話もするかもしれませんが。
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