仮名手本忠臣蔵を通し狂言で観た。通しで観るのは初めて。文楽で観るのも初めて。黒門市場で二食分の弁当を買って、朝から晩まで劇場にいた。おしり痛かったぜ。
でも、実に面白かった。
予習は橋本治の「浄瑠璃を読もう」。相変わらずのクリスピーな文章が、関西な文楽の説明にフィットする。歌舞伎の「忠臣蔵」を観ているとなんとなく関東のもの、というイメージが出てくるが、現実には赤穂藩は兵庫県だし、一力屋は祇園だし、大星由良之助の家は山科だし、勘平は山崎だし、この劇は基本関西の話なんですね。
橋本治は三島由紀夫でも小林秀雄でもそうだが、「○○はこういうことだ」と本質をズバリとつく点で素晴らしい。細かい解説でウンチクを披露するのは二の次で、とにかく本質をズバリとつく。内田樹先生が「ミリオンダラー・ベイビーはあしたのジョーである」とズバリといくのにそれはシンクロする。多くの評論家は「調べれば書いてあること」をリフレーズするだけなのに、これはすごいことだ。
それにしても高齢者も若い人も多くて、劇場は大入り。これが橋下市長のツンデレマーケティングとすれば、分かってやっているんならかなりの才覚である。天然でやっていたとしても、それはそれでかなりの才能だ。田中元文部科学大臣も似たような才覚を持ってるけど(たぶん天然)。
病気休養だったり、明らかに体調悪そうな太夫もいたけど、全体的には三味線、語り、人形共に満足満足でした。九段目って意味わからなかったけれど、今回ようやく理解しました。それは、橋本治に習って、当時の江戸時代の観客の世界観を追体験するように見れば分かる、という感じを得たからだ。
落語の「四段目」「淀五郎」「中村仲蔵」でお馴染みの演題も面白かった。文楽の斧定九郎って歌舞伎の仲蔵から演出をとっていたんですね。しらんかった。
人形浄瑠璃ならではの乾いた、残酷な、あるいは性的な描写も人間が出ていないのでさらりとできる。このへんも面白かった。また見に行きたいけど、全段通しはもう無理だろうなあ。
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