化療学会と感染症学会が合同でガイドラインを作成し、パブコメを募集しています。7日までです。どうでもいいけどこの2つの学会、一緒にしちゃえばいいのにね。
さて、以下は僕の提出したコメント。よかったらお読みください。
ガイドラインについてコメント申し上げます。エビデンスレベル、推奨レベルも明記してあり、全体的には妥当な内容だと考えます。以下、問題を感じた部分についてのみ言及させてください。
なお、私のコメントの背景としては、例えば次の文献が参考になります。
日本臨床腫瘍学会「発熱性好中球減少症診療ガイドライン」2012
感染症診療ガイドライン総まとめ 総合医学社 2010
1.まず、ガイドライン作成プロセスを明示したほうが良いと思います。
2.作成委員の利益相反を公開すべきだと思います。
3.協力委員は製薬メーカー社員ですが、利益相反が問題になります。彼らがガイドライン作成上どの部分で「協力」しているのか明確にする必要があります。また、本文作成「そのもの」には関与していないことが重要です。
4.各抗菌薬の説明はあるのに、疫学や疾患については引用文献がないのはおかしいと思います。本文中すべての内容について、データの引用元を明示すべきです。
5.6ページの「人工呼吸器関連肺炎の場合、抗菌薬投与前の気管内採取痰を用いた培養結果で、MRSA が分離されても、菌数が少なく同時に、グラム染色で有意の貪食像の認められない場合には、抗 MRSA薬の中止を考慮する」は、いくらC-IIIとはいえ根拠をあまりにも欠いているため、削除したほうが良いと思います。
6. 7ページ。「血液培養からグラム陽性球菌が分離され、ブドウ球菌が疑われる際は、感受性結果が判明するまで、MRSA菌血症として治療する」も、文脈上、あきらかにコアグラーゼ陰性菌によるコンタミネーションと判断できることも多いので(例えば、尿路感染における1セットのグラム陽性菌検出時など)、文章としては適切とはいえません。
7. 同ページにおいて、MRSAのMICがまだアメリカほど高くない日本において、ダプトマイシンをバンコマイシンに優先して推奨するのはやや時期尚早ではないかと懸念します。アメリカではダプトマイシンがかなり多用されていると聞きます(個人からの情報なので妥当性は不明)。メタ分析でもバンコマイシンとダプトマイシンは優劣なく、今後懸念されるMICの上昇や新薬をスペアする意味でも、現段階の日本においてはバンコマイシンを優先させるべきかと存じます。心内膜炎についても同様です。
1.Kanafani Z, Boucher H, Fowler V, Cabell C, Hoen B, Miró JM, et al. Daptomycin compared to standard therapy for the treatment of native valve endocarditis. Enferm. Infecc. Microbiol. Clin. 2010 Oct;28(8):498–503.
2.Vardakas KZ, Mavros MN, Roussos N, Falagas ME. Meta-analysis of randomized controlled trials of vancomycin for the treatment of patients with gram-positive infections: focus on the study design. Mayo Clin. Proc. 2012 Apr;87(4):349–63.
3.Warren RE. Daptomycin in endocarditis and bacteraemia: a British perspective. J. Antimicrob. Chemother. 2008 Nov;62 Suppl 3:iii25–33.
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。