発売直後に買っていたのだけれど、ずっと読めなかった本(という本が山ほどあるのですが、そのうちの一冊)。非常によい本ですね。
まず、感染症診療の流れとグラム染色が総論的に説明され、あとはひたすらケース。それも難しい、ややこしいケースではなく、コモンな感染症ばかり。しかしもちまたでしばしば失敗されている感染症ばかりがずらりと並んでいる。ケースに横串を指すように、微生物や抗菌薬、こぼれ話みたいな解説が織り込まれていて、筆者の魂や皮肉や怒りもちょっぴり入っていたりして、読んでいてとても興味深い。これ一冊読めば、学生、研修医(そして指導医)は、基本的な感染症への対峙の仕方がきっちり理解できるはずだ。
もちろん、HIVとか熱帯とか、臨床研究とか、そういう領域にはそれ相応の魅力がある。しかし、やはり基本的な感染症をしっかり抑えることが大前提で、そういう基本的な教育が案外なされていないのが日本感染症界最大のウィークポイントである。そういえば、最近医師会雑誌で外来感染症の特集が組まれていたが、世代交代も進んでとても優れた内容になっていた。風は変わりつつある。まだまだ残念なケースは後を絶たないが、焦らずくさらず、少しずつ質の向上につなげていきたい。そのためにも、こういう本はどんどん読まれて欲しいと思う。まあ、本音を言うとまず指導医クラスにちゃんと読んでほしい。研修医の苦情の多くは、「勉強しても指導医が理解してくれない、指導医が勉強していない」なのだから。
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