災害時に駆動すべきセクションはたくさんあるが、公衆衛生もそのひとつだ。監修者の國井修先生は、東日本大震災時の日本の災害公衆衛生に問題点が多かったと指摘し、それを改善すべく本書を編纂された。栄養、母子保健、メンタルヘルス、害虫対策など臨床医療だけでなく公衆衛生のコミットメントは重要で、ぼくも昨年現地でたくさんの保健師さんたちの取り組みを目の当たりにしてきた。それでも、まだまだ課題が多い、改善点が多いというのが國井先生たちの指摘である。特に、公衆衛生を「行政の仕事」と決めつけてはいけない、という指摘は興味深い。関係者必読の教科書だと思う。
ただ、複数著者による書物なこともあり、たぶん出版を急いだせいもあろうが、各章で若干バラツキが多い。ぼくの関わる感染症については教科書的な内容は網羅していたが、今ひとつリアリティーを欠くというか、、、、國井先生が指摘する「総論はいいが、各論がちょっと」な印象を受けた。一般に、教科書に「適切に」という言葉が頻用されているときはリアリティーに乏しいことが多いお(どうすれば「適切」なのかが、必要なのよ)。これを読んでも実際現場で動けないんじゃないかなあ、、、、辛口だけど、そう思いました。
元行政医でしたが、確かにおっしゃる通りです。かつ公衆衛生というのが古い用語で、やはりpublic healthという方がいいような気がします。公衆衛生イーコル保健所長あるいは行政保健師という時代では乗り切れない時代です。未だに保健師の研修会講師に呼び出されることがありますが、なんというか枠決めがあって、それでは現在のリスク社会には対応出来ませんね。
投稿情報: MrBlue54 | 2012/07/28 06:41