注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだけ寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際には必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jpまで
ベーチェット病は口腔粘膜、皮膚、眼、外陰部において急性炎症が反復することを特徴とし、増悪と寛解を繰り返しながら遷延した経過を辿る難治性疾患である。発症から数年以内が最も活動性が高く、その後次第に鎮静化していく。再発性の口腔内潰瘍、陰部潰瘍、反復性のブドウ膜炎を3主徴とし、これが診断の指標となるが、生命予後は遅発性である神経、腸管、血管ベーチェットの特殊病型において特に悪い。また、眼症状は著しくQOLを下げることになる。
ベーチェット病の病因は未だにはっきりとはしておらず、また治療に用いられる薬物も非常に高額であるが、このような難治性疾患に対して難病指定という制度がある。
難病の定義は、①稀少性,「おおよそ患者数5 万人未満」、②原因不明,③効果的な治療法未確立、④生活面への長期にわたる支障(長期療養を必要とする)とされ、難病指定制度は、難病の調査研究の推進、医療費の自己負担の解消を目的として昭和47年10月より開始された。当初調査研究の対象を、重症筋無力症、SLE、サルコイドーシスといった8疾患とし、ベーチェット病もこの最初に対象となった疾患の1つであった。その後、対象疾患は増え続け、平成21年における調査研究対象130疾患、治療研究対象56疾患にまでなっている。
治療研究対象疾患の治療費は、社会保険各法の規定に基づく自己負担の全部または一部に相当する額の1/2 を毎年度の予算の範囲内で都道府県に対して国が補助する、とされている。この際、患者の所得や治療状況を考慮に入れ、患者の自己負担分は入院の場合は0 ~ 23,100 円/ 月、外来の場合はその半分、と規定されている。
ここまで難病指定の制度について述べてきたが、現在この制度は多くの問題点を抱えており、以下に挙げていきたいと思う。
① 先に述べた治療研究対象疾患の治療費を国は30%も負担できていない点。
②「疾患としての卒業生」がいないという点。すなわち、ある疾患についてはもう難病に指定しておかなくてもよいほどに原因も解明され治療の手立ても整ってきていても、生活がかかっている患者が多く、簡単に特定疾患としての指定を外すのは難しい。また、疾患としての認定は外さずに対象とする障害度を挙げて受給者数を抑制する方策を採用しようとしても、同様の理由で難しい。
③ 特定疾患に指定されて医療費補助も受けられる疾患と非常に類似した症状や経過を示す疾患でありながら、異なる疾患であるということで除外され医療費補助の対象にしてもらえないというように、指定(選定)基準が必ずしも明確とは言い難い点。(特に、小児慢性特定疾患治療研究事業で補助を受けていた患者が、制限の20歳を超えた場合の、いわゆるキャリーオーバーの問題)
このように多くの問題点を抱える難病指定制度であるが、これまで果たしてきた役割は大きく、
これからもその役割は変わらないだろう。これらの問題を解決していくのは容易ではないが、常に議論を続けていく必要がある。
参考 1)膠原病学 改訂4版 塩沢 俊一 著
2)『保健医療科学』 第60巻 第2号 (2011年4月)
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