何度いっても(構造的に)見逃され続ける心内膜炎。繰り返し、このネタは出します。
感染性心内膜炎の診断
感染性心内膜炎(Infective Endocatditis: IE)は弁を含む心内膜の感染症で、弁の破壊・感染、免疫反応などに基づき、さまざまな臓器に異常をきたす。1IEは症状が非特異的なため診断が難しく、原因検索しないまま抗菌薬が投与されていたり、心不全や脳梗塞などの重篤な合併症を発生してから発見されるケースもみられる。2診察では以下の点に注目し、Duke判定基準を用いて診断を行う。
① 症状:IEの症状は、全身倦怠感、発熱、寝汗、体重減少、関節痛、筋肉痛など非特異的である。発熱は80〜90%で起こる、最も頻度の高い症状である。IEは不明熱の代表的な原因疾患であるため、常に鑑別疾患に挙げる必要がある。4
② 病歴聴取:菌血症を起こす危険性のある処置、すなわち歯科治療や静脈注射などが行われたか、人工弁や弁膜異常がないかなどに注意しなければならない。1,3
③ 身体診察:塞栓症、心症状、免疫症状により以下のような所見がみられる。3
点状出血(眼瞼結膜や眼球結膜) 10~40%
Splinter hemorrhage(爪下の線状出血) 2~15%
Janeway lesion(手掌・足背の無痛性の紅斑性の結節) 2~15%
Osler結節(指腹・母指丘の有痛性の青紫色の結節) 2~15%
新規の逆流性心雑音 20~50%
脾腫 15~50%
④ 検査:IEの診断において血液培養が最も重要な検査であり、血液培養が陽性の場合、常にIEの可能性を考える。血液は抗菌薬を投与する前に2セット採取する。心内膜炎の菌血症はconstantであることが特徴で、抗菌薬が使用されていなければ、血液培養はα連鎖球菌で90%以上、非連鎖球菌で60〜80%で陽性となる。その他、心エコーも診断に用いられる。感度は経胸壁エコーで60〜80%、経食道エコーでは90%であるが、エコーのみでIEの除外診断はできない。特異度は高い。1
⑤ これらの所見をもとにDuke判定基準を用いて診断する。3
大基準 |
血液培養:陽性※(2回または持続的)、Coxiella burnetii陽性まはIgG抗体価が1:800以上、 心内膜障害の証拠:心エコー陽性または新たな弁逆流 |
小基準 |
疾病素因・麻薬静注、38℃以上の発熱、血管病変、免疫学的現象、血液培養1回陽性 |
確定診断:大基準2つ、大基準1つ+小基準3つ、小基準5つ/可能性あり:大基準1つ+小基準1つ、小基準3つ
※viridans streptococci, S. bovis, 市中感染のS. aureus,またはEnterococcus, HACEK
IEは症状・身体所見が非特異的で見逃されてしまうことが多い。Dukeの判定基準において血液培養が重視されているが、採取の前に抗菌薬投与を行うと感度が低下し、さらに診断が困難になる。1重篤な合併症をきたす前に適切に診断・治療を行うために、原因不明の発熱をみた際は、漠然と抗菌薬を投与するのではなく、常にIEを念頭に置いて診察を行うべきである。
参考文献
1 レジデントのための感染症診療マニュアル第2版;青木眞,医学書院、2感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン; 日本循環器学会、3 Daniel J Sexton;Diagnostic approach to infective endocarditis, UpToDate 2012; last updated 19/03/2012、4 Harrison’s Principles of Internal Medicine 18th Edition
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