病院の外では膵炎の多くは石と酒。病院の中では、薬や手技です、、、
薬剤性膵炎について
急性膵炎にはさまざまな原因があるが、その中で多いのは胆石、アルコールである。薬物に関連した急性膵炎はおよそ2〜5%1)または0.3〜1.4%2)である。100を超える薬剤が急性膵炎の原因として関連づけられているが、それらは、報告症例数や潜伏期間の一致、薬剤の再投与による反応に基づき、以下のように分類される。3)
Class Ⅰ、Class Ⅱに分類される薬剤は、急性膵炎を引き起こす可能性が高いとされる。2) 具体的な薬剤としては以下のものが挙げられる。アザチオプリン、6−MP、バルプロ酸などは、特に報告数が多い。3)
Class Ⅰa |
薬剤の再投与により膵炎が再燃した症例報告が1例以上あり、他の原因が除外できる |
Ⅰb |
薬剤の再投与により膵炎が再燃した症例報告が1例以上あるが、他の原因が除外できない |
Class Ⅱ |
4例以上の症例報告があり、75%以上の症例で潜伏期間が一致している |
Class Ⅲ |
2例以上の症例報告があるが、薬剤再投与による再燃がなく、潜伏期間も一致しない |
Class Ⅳ |
上記に該当せず、症例報告が1例のみである |
他の原因とは、胆石、アルコール、高トリグリセリド血症、または他の薬剤の使用などである。
潜伏期間latencyとは薬剤の投与開始から膵炎の発症までの期間のことであり、薬剤により異なり、次の3つに分けられる。 ①short (<24 hours) ②intermediate (1~30 days) ③long (>30 days) 3)
Class Ⅰa
バルプロ酸[抗てんかん薬]、テトラサイクリン[抗菌薬]、ペンタミジン[抗真菌薬]、メトロニダゾール[抗原虫薬]、イソニアジド[抗結核薬]、スリンダク[抗炎症薬]、シンバスタチン・プラバスタチン・ベザフィブラート[脂質異常症治療薬]、メチルドパ・エナラプリル[高血圧治療薬]、プロカインアミド[抗不整脈薬]、フロセミド[利尿薬]、コデイン[鎮咳薬]
Class Ⅰb
アザチオプリン[免疫抑制薬]、6−MP・イホスファミド[抗悪性腫瘍薬]、ST合剤[抗菌薬]、ラミブジン[抗HIV薬]、デキサメタゾン[ステロイド]、ロサルタン[高血圧治療薬]、アミオダロン[抗不整脈薬]、オメプラゾール[消化性潰瘍治療薬]
Class Ⅱ
クロザピン[抗精神病薬]、プロポフォール[麻酔薬]、L-アスパラギナーゼ・タモキシフェン[抗悪性腫瘍薬]、エリスロマイシン[抗菌薬]、ジダノシン[抗HIV薬]、アセトアミノフェン[解熱鎮痛薬] 、エストロゲン[ホルモン剤]
急性膵炎のうち、薬剤が原因であるものに臨床的な特徴はない。したがって、まず疑うことから始め、十分に薬歴を聴取することが診断には不可欠である。被疑薬を服用しており、他の原因がない場合の膵炎については、特に疑いをもたなければならない。2) 薬剤性膵炎と診断する場合には、以下の要件を踏まえる。4)
①薬物治療中に膵炎を発症したこと ②他の原因の可能性がないこと
③薬剤投与の中止により症状が軽快すること ④薬剤の再投与により症状が再燃すること
④については、倫理的な理由から治療に必要な薬剤に限られ4)、実際には、急性膵炎の他の原因が検出されず、患者がその被疑薬を服用している場合、薬剤性膵炎という診断が確認される。5)
【参考文献】
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HARRISON’s Principles of internal medicine 18th Edition p.2635
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Santhi Swaroop Vege, MD ; Etiology of acute pancreatitis, Up To Date 2012; last updated: 1 23, 2012.
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Badalov N, et al. Drug-induced acute pancreatitis: an evidence-based review. Clin Gastroenterol Hepatol. 2007 Jun ;5(6):648-61
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McArthur KE. Review article: drug-induced pancreatitis. Aliment Pharmacol Ther. 1996 Feb;10(1):23-38.
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Nitsche C, et al. Drug-induced pancreatitis. Curr Gastroenterol Rep. 2012 Apr; 14(2): 131-8.
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