診断が難しく、わかった様でよく分からないのが心筋炎ですね。
心筋炎
概要
心筋炎は心筋の炎症性疾患である。無症状から突然死まで病状が多彩で、生検がなければ確定診断ができず、軽症例は診断が困難なため、正確な発症率や死亡率を指摘した文献はない。「日本病理剖検輯報」によれば1958年からの20年で377841剖検中434例(0.115%)の症候性心筋炎が報告されている(1)。重篤な左室不全(EF<35%)を伴うウイルス性心筋炎は慢性に経過し、拡張型心筋症に移行することがある。
病因
心筋炎は様々な原因で発生する。頻度が高いのは感染性であり、そのほとんどはウイルス性である。中でもピコルナウイルス群のエンテロウイルス(特にコクサッキーウイルスB群)、アデノウイルス、パルボウイルスB19、HIV感染症やC型肝炎ウイルスなどの頻度が高い(2)(3)。感染性では他に細菌性、リケッチア、真菌、寄生虫などがあるが稀である。感染性以外では薬物、放射線、物理的刺激によるもの、膠原病・川崎病・サルコイドーシスなどの全身性疾患に伴うものが知られている。
症状
無症候性に経過することもある。初発症状は発熱が最も多く、次いで胸痛、呼吸困難、咽頭痛、動悸である。消化器症状(嘔吐、下痢など)が先行することもある。数時間から数日後、心症状 ①心不全徴候(約70%)、②心膜炎症状(約44%)、③心ブロックや不整脈(約25%)(4)に随伴する症状が起こる。
身体所見・検査
身体所見:特異的なものはないが心不全徴候(脈の異常、奔馬調律、心膜摩擦音、収縮期雑音)が見られる。
心電図:特異性に乏しいが、ほとんどの症例で何らかの異常が見られる。ST-T変化が最も多く、次いでR波増高、異常Q波、低電位、完全房室ブロック、心室内伝導障害、心室細動・心室頻拍である(3)。
心エコー図:局所的あるいは瀰漫性に壁肥厚や壁運動低下がみられ、心腔狭小化や心膜液貯留を認めることがある。
血清:心筋構成蛋白(心筋トロポニンI・TやCK-MB)増加が認められることがある。
核医学検査:ガリウム-67(67Ga)の心筋集積は大型単核細胞の浸潤像を反映しており特異性が高いが感度はあまり高くない。一方梗塞心筋の描出に用いられるテクネチウム-99m(99mTc)ピロリン酸心筋シンチグラフィは比較的高感度で心筋炎病巣に一致した集積像を描出する。
心内膜心筋生検:唯一の確定診断である。病理所見は心筋細胞の変性と間質の炎症細胞浸潤である。浸潤細胞は病因によって異なり、リンパ球浸潤はウイルス感染によるものが多い。
参考文献
(1)Okada R,et al. A statistical and clinicopathological study of autopsy cases. Jpn Circ J 1989; 53: 40-48.
(2)Matsumori A,et al. Hepatitis C virus from the heart s of patients with myocarditis. Lab Invest 2000; 80:1137-1142. (3)Bowles NE,et al. Evidence of adenovirus as a common cause of myocarditis in children and adults. J Am Coll Cardiol 2003; 42: 466-472. (4)厚生省特定疾患特発性心筋症調査研究班 ウイルス性あるいは特発性心筋炎に関する全国アンケート調査第3報 (5)ハリソン内科学 第3版 メディカル・サイエンス・インターナショナル (6)循環器病学 西村書店 (7)Leslie T,et al. Myocarditis The New England Journal of Medicine
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