予防接種の同時接種についてはいろいろ混乱がある。まず、Redbookの記載をここに訳す。
ほとんどのワクチンについては同時接種は安全で効果的である。幼児、小児は複数のワクチンに反応するだけの十分な免疫能を持っている。幼児と小児に対してルーチンに推奨されるワクチンを複数接種することに関して、なんら禁忌は存在しない。通常、あるワクチンの免疫反応は別のワクチンの反応に干渉しない。IPV, MMR, 水痘、DTaPの同時接種は別々に接種した場合と比べてセロコンバーション率も有害事象も同様である。他のルーチンに接種するワクチンについては、同時接種のデータは不十分だったりなかったりする。通常のワクチンの同時接種が他の推奨ワクチンの効果や安全性に影響を与えるという知見はないから、年齢や免疫状態から推奨されるワクチンの同時接種は全て推奨される。同時接種の際にはシリンジは別にし、場所を1インチは離さなければならない。これによって局所反応は区別できる。同時接種により接種率は有意に高めることが可能だ。同じシリンジに混ぜてはならない。海外旅行に行く場合にも複数のワクチンは同時接種可能だ。もし、生ワクチンが同時接種されない場合は4週間の間隔を空けるべきだ。生ワクチンと不活化ワクチン、不活化ワクチン同志の場合、開けるべき間隔は決められていない。不活化ワクチンと免疫グロブリンは同時接種できるが、別の部位にすべきだ。(やや意訳)。
これに対して、厚労省は同時接種については明言せず、不活化ワクチンも1週間空けるようにとしている。副作用を区別するためである。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bcg/guideline/2.html
その意図は否定しない(間隔を空けたければ、空ければよい)。しかし、強制的なのは困る。世の中のお母さんはそんなに暇ではない。同時接種でなければ必要な予防接種を受けられない人も多い。副作用を過度に恐れて、子どもが病気になってしまったら本末転倒である。この手の本末転倒は日本に蔓延している。
教条的に自分の都合を押し付ける行政は悪政である。実は厚労省もそのことを強制していない。「医師が特に必要と認める場合はその限りではない」としている。だから、ぼくはいつも特に必要と認めている。それがプロの医師というものだ。残念ながら、最近の週刊日本医事新報にはそのことが無視された記載があった。意図は理解するが、納得はしないし賛成もしない。最近、某所の保健所では「厚労相が認めていない」という理由で不活化ワクチンを1日ずらして接種した医師を咎めたという。保健所職員がプロの医療者であるという自覚とプライドがあるのなら、このような発言は決してしてはならない。
医師も保健所職員ももっと自分の職責と職能についてよくよく考えるべきだ。マニュアルを遵守し、「コンプライアンス」を守っていればプロであるという思い込みは思考停止である。コンプライアンス、コンプライアンスと連呼する輩は、思考停止しているという意味で素人的である(もちろん、違法行為はだめだが、ここには何の違法性もない)。
お上(は通常素人である)が言っているからとプロがプロとしての判断を放棄するのは困る。みんな、もっとプライドを持つのだ。
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