感染症外来を見学してもらった学生に作ってもらいました。
B型肝炎ワクチンについて
【ワクチンの適応・必要性】
B型肝炎ウイルス(HBV)は感染力が強く、ワクチンの適応としては医療従事者や、B型肝炎ウイルスに感染している母親から生まれた新生児、異性間性交渉をする男女、血液製剤の輸注を必要とする患者、感染者と同居、性交渉する人、種々の厚生施設や障害者施設の被収容者・従事者、血液透析患者などが挙げられる。医療従事者においては、HBs抗原陽性血液の場合、誤刺事故の約30%に感染を認める。これはC型肝炎ウイルス(HCV)やHIVよりもはるかに感染率が高い(HCVは3%、HIVは0.3%である)。感染している医療従事者が集団発生の感染源になった例も報告されており、欧米の医療施設ではHBs抗原陽性の外科医は侵襲的な治療を制限されている。
【接種の効果判定と抗体価】
通常の3回接種(0ヶ月、1ヶ月、6ヶ月)法で95%以上の確率で予防可能な抗体レベル(第3回目の接種から1ヶ月後の抗HBs抗体値>10mIU/ml)が得られる。効果決定因子としては加齢(ワクチンによる抗体価陽性率の反応性は40歳代で80%、60歳代で40%)、喫煙・肥満・糖尿病(同反応性:70%~80%)、HIV感染症(同反応性:50%~70%)、腎不全・肝障害(同反応性:60%~70%)などがある。接種する部位は、腕の三角筋に接種する方が殿部に接種するよりも効果が高いという報告がある。抗体産生を得られない、あるいは不十分な場合には追加接種を最大3回まで行う。効果判定の為の抗体価測定は追加接種ごとでも3回終了時でもよい。米国では一度十分な抗体価が得られればその後抗体価が低下しても曝露に対して効果的な免疫反応が得られるため、経時的な抗体価測定は不要であると考えられているが、日本では追加免疫に対する一致した標記はない。(ただし、腎不全症例を含む免疫不全症例においては定期的な抗体価測定と追加投与が有効なケースも報告されている)
【HIV感染者に対するB型肝炎ウイルスの予防接種について】
B型肝炎は、感染の成立が血液・体液を介する点でHIV感染症と同様の経路である。このためHIV感染症のある症例は、早晩B型肝炎に羅患する可能性が高い。さらにHIV感染者がB型肝炎ウイルスに羅患した場合、慢性化する傾向が強い。HIV感染者は免疫力が下がっておりワクチンのresponseが低い為、CD4の値が200/mm3以上になってB型肝炎ワクチン接種の適応となる。<C.F.>B型肝炎ワクチンの接種投与量を倍に増加して抗体価陽性率が上昇するのは、CD4が350/mm3以上のHIV感染者にB型肝炎ウイルスを接種する症例でみられるという報告もある。
【参考文献】Lemon SM ,Thomas DL . Vaccines to prevent viral hepatitis. N Engl J Med 1997;336;196/Randomised trial of recombinant hepatitis B vaccine in HIV-infected adult patients comparing a standard dose to double dose. Vaccine 2005;39;167-173 / MMWR:CDC / レジデントのための感染症診療マニュアル 第2版 医学書院/ハリソン内科学 第3版 メディカル・サイエンス・インターナショナル
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