さ、ミリテーシリーズです。
感染症内科BSLレポート
課題:粟粒結核の疫学と臨床症状
粟粒結核の疫学
平成22年度結核登録者情報調査年報集計結果によると、結核の罹患率の減少傾向は続いているが、国内では未だ2万3千人以上の結核患者が発生している。日本の結核罹患率(18.2)は、米国(4.1)の4.4倍、カナダ(4.9)の3.7倍、スウェーデン(5.6)の3.3倍、オーストラリア(6.4)の2.8倍で、世界中でみても中蔓延国と言える。都道府県別に罹患率をみると、大阪府、長崎県、東京都の順に高く、長野県、群馬県、山形県の順に低い。長野県は都道府県罹患率で初めて10を下回った。その一方、罹患率の一番高い大阪府は、罹患率の一番低い長野県の3.3倍、大阪府の中でも大阪市は長野県の5.2倍であり、地域差は依然大きく、大都市に高い傾向がある。兵庫県では新規患者数は年間1100人で、罹患率全国ワースト5位となっている。神戸市については平成21年度の報告によると、新規患者の発生総数は403人で、依然多いが、近年新規患者の発生総数は減少傾向である。
粟粒結核は結核全体の1〜2%を占め、男女比は男性がやや多く、中・高年層に増加の傾向がある。平成21年度の粟粒結核による死亡数は男性48、女性102の計150となっている。これは近年大きな変動はない。
結核菌初感染に引き続き、肺門リンパ節・縦隔リンパ節・傍気管リンパ節と病巣を形成し、結核菌は静脈角から血中に入って播種される早期蔓延例が以前は多かった。近年は初感染後20年以上経過して発生する晩期播種型が増加しており、慢性肺結核、SLE、悪性リンパ腫、悪性腫瘍、腎不全などの重大な基礎疾患のある例で、副腎ステロイドや抗腫瘍薬の投与中や人工透析などでみられることが多い。肝疾患、アルコール中毒、糖尿病、妊娠出産、妊娠中絶なども基礎疾患とみなされる。
粟粒結核の臨床症状
食欲不振・全身倦怠感・体重減少・発熱・盗汗・咳嗽・胸痛・頭痛・腹痛などが典型例でみられ、重病感のあることが多いが、臨床症状は非特異的で不定形であり、しばしば侵された部位により異なる。罹患臓器は、肺・髄膜・骨髄・胸膜・肝臓・腎臓・脾臓・リンパ節・ぶどう膜・副腎など多数にわたる。発熱は高率にみられ、38℃を超すものが多く、弛張熱が多いが、一部は稽留熱・不規則熱である。しばしば不明熱の原因となる。
症状 |
発熱/盗汗 |
食欲不振 |
体重減少 |
全身倦怠感 |
呼吸器症状 |
胃腸症状 |
頭痛、中枢神経症状 |
頻度(%) |
96 |
92 |
92 |
92 |
72 |
21 |
25 |
Maartens,1990
身体所見では肝腫大、脾腫、リンパ節炎などを認める。眼底検査では脈絡膜に脈絡膜結核がみられる。粟粒結核に特徴的な所見で、患者の30%にみられる。これは蒼白ないし灰白色の円形斑点で、大きさは1mm以下のことが多く、乾酪壊死が進むと病巣の中心部が陥凹する。数は1,2個から多数まで多様である。また、髄膜症は10%未満にみられる。
身体所見 |
発熱 |
呼吸音異常 |
肝腫大 |
脾腫 |
皮膚症状 |
頻度(%) |
96 |
72 |
52 |
15 |
4 |
Maartens,1990
参考文献:2011uptodate Pathogenesis and epidemiology of military tuberculosis
2011uptodate Clinical manifestations;diagnosis;and treatment of military tuberculosis
ハリソン内科学 第3版
平成22年結核登録者情報調査年報集計結果(厚生労働省)
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