これはあちこちで書いたり言ったりしていることなので、今更な方は申し訳ない。
感染症学会専門医制度に異を唱えている。たしか2007年からだったが、感染症学会は認定施設を設け、ここでの研修を専門医取得の条件にしている。
それは、よい。
しかしここからが問題である。施設認定の為にはその施設に指導医が常勤していなければならない。指導医は、感染症学会専門医取得から5年を経なければ取得できない。この「5」という数字にはなんら学的な、論理的な整合性がない。単に既得権の維持と若手の台頭阻止という「悪意」を持っている印象すら与えてしまう(そんな邪心がないことを心から祈っているけど)。
指導医のいない施設は多い。指導医資格を持たない感染症のプロも多い。かくいうぼくも、その一人だ。
日本の感染症医は少ない。3000人から4000人が必要とされる、と感染症学会自身が認めているのに。認定施設が足りず、専門家が育たない。そんなわけで「暫定」の指導医や認定施設が設けられた。しかし、そこでは認定施設の1年が0.75年とカウントされ、長期の研修を必要とする。そのことの正当性も妥当性もぼくには理解できない。
指導できなければ、プロとは言えない。専門医を取得したら、即座に指導医として扱うのが常識である。5年の年限は指導意欲に燃える感染症医の意をそぐものである。おまけに、少なからぬ指導医は実際には教育活動に従事していない。つまりは、単なる「名前貸し」である。名前を貸す人物の有無が研修施設の認定の有無に直結する。こんな不正義があってよいものか。
繰り返す。指導医と専門医という二階建ての制度は廃止すべきだ。認定施設と暫定認定施設という二重制度も廃止すべきだ。全ての専門医は指導医として扱われるべきである。もし現在の専門医認定制度が指導能力を担保していないのなら、それこそ問題であり、担保しているようにそちらを制度改革するのが筋である。
加えて、日本のドクターには感染症に関する異なる複数の資格制度が存在する。これも分かりにくい。
感染症学会の専門医、指導医制度
化学療法学会の臨床試験指導医、抗菌化学療法認定医、指導医
ICD制度協議会と各学会によるiCD
それぞれの資格を取得するのは煩雑だしお金もかかる。ICDの更新を専門医が行うのもへんである。ビギナー向けのレクチャーを更新の為だけに聞かされるのは、率直に言って苦痛である。
提案である。ICD制度協議会は廃止、改組し感染症専門資格制度協議会(仮称)となるべきである。それぞれにレイヤーを設け、
感染症専門医クラス1,2,3とレベルアップしていくようにすればよい。今のICDをクラス1程度、専門医はクラス2とアップしていく。こうすれば複数の資格をそれぞれ維持するペーパーワークや金銭的負担はなくなるし、レベルアップしたらレベルを下げた更新作業も不用になる。なにより外部に対して分かりやすく、アカウンタビリティーがアップする(現行制度の意味、他領域の方に説明できますか?)。
これとは別にサブスペシャルティーの認定制度を設けてもよい。熱帯医学認定、HIV診療認定と増やしていく。ボウイスカウトのバッジのようなものだ。あれも昇級制度と各種スキルのバッジをミックスしていて今思うととてもエンカレッジングなよいシステムだなあ(胸に他階級のバッジ、肩にたくさんのバッジがあるとかっこよかったものだ)。
http://www.scout-aichi.or.jp/scout/bs/bs.html
これなら現場の医師の意欲は増す。現在のように資格は持っているけど仕事はしたくないという隠れICDも減り、より高いレベルへの促しもできる。よいことばかりだ。それを不快に思う「なにか」がなければ。
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