こちらは難しいテーマだったのでやや言葉足らずだけど、5年生にしては上出来です。
HIV感染結核患者の治療について
【はじめに】
結核はかつて米国においては消滅すると思われていたが、HIVの流行に伴って再興した。HIV感染により活動性結核の罹患リスクは100倍となり、結核はHIV感染者にとって最も多い日和見感染症となっている。その頻度に加えて、結核は重篤な病的状態や死亡とも関連しており、世界的に見てAIDS関連死のおよそ3分の1が結核を合併している。このようにHIV流行に組み込まれた形の結核の流行は深刻な問題になっている。
【治療】
抗結核薬による結核治療はHIV感染患者でもHIV非感染患者と同様に有効であるが、HIV感染結核患者では、抗レトロウイルス治療の開始時期に注意すべきである。なぜなら、結核治療と抗レトロウイルス治療の併用治療には、免疫再構築症候群(IRIS)や薬剤相互作用、抗結核薬と抗レトロウイルス薬の副作用の重複などの問題があるからである。免疫再構築症候群とは、抗レトロウイルス薬の投与に伴い一時的に免疫機能が改善されたことにより起こる反応で、その症状には発熱、リンパ節腫脹の出現・悪化、胸水の増加などがある。免疫再構築症候群は治療の失敗や別の感染症によるものと誤認されやすいため、抗結核薬の効果が出るまでの数週間は抗レトロウイルス治療を延期する方が合理的である。抗レトロウイルス治療の適切な開始時期については多くの研究がなされており、まだ議論の余地はあるものの、現在のCDCのガイドラインでは、結核治療開始から抗レトロウイルス治療開始までの期間を、患者のCD4+T細胞が200 cells/mm3以下の場合は2-4週、200-500の場合は2-4週あるいは8週以内、500以上の場合は8週以内とするよう推奨されている。薬剤相互作用としては、リファマイシン系薬と抗レトロウイルス薬間の相互作用が問題となるが、リファマイシン系は結核治療において重要であるため可能な限り処方に組み入れるべきである。リファンピシンは抗レトロウイルス治療に必須の多くのプロテアーゼ阻害薬といくつかの非ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬の血中濃度を下げるため、それらの薬剤と併用する時は、相互作用の少ないリファブチンがリファンピシンに代えて推奨されている。
【参考文献】
1. Up to date;Treatment of pulmonary tuberculosis in the HIV-infected patient
2. Up to date;Epidemiology, clinical manifestations, and diagnosis of tuberculosis in HIV-infected patients
3. Guidelines for the use of antiretroviral agents in HIV-1-infected adults and adolescents.
January 10, 2011.
4. http://www.jata.or.jp/rit/rj/2008.12_hiv.pdf
HIV感染合併結核の治療に於ける薬剤相互作用への対応
5. ハリソン内科学 第3版 メディカル・サイエンス・インターナショナル p.1062-1067,1230-1231
6. レジデントのための感染症診療マニュアル 第2版 医学書院 p.1045-1047,1261-1262
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