臨床現場で実に悩ましい薬疹のまとめ。労作です。
薬疹の分類
学籍番号0713603 整理番号70 藤倉航平
体外性物質が体内に入り、もしくは体内で産生された物質が、生体に障害を与え、その結果として、発疹を生じたものを中毒疹toxicodermiaと言い、特に原因物質が薬剤である場合を薬疹drug eruptionと定義する。薬疹は、薬物に対する最も頻度の高い副作用の一つであり、入院中の症例の2-3%見られる。典型的なものは薬物治療開始後、数日から4週間までに起こる。
薬疹の分類は、(1) 発疹の形態、(2)従来の皮膚疾患、(3)薬疹特有の形態、を背景として行われており、多数の病型が存在している。以下に薬疹の病型分類とその特徴を示す。日本と米国ではほぼ同様の概念で分類が行われ、大きな違いは見られない。
病型 |
特徴 |
好発薬剤 |
紅斑丘疹型 |
最も頻度が高く全身に均等に紅斑・丘疹 |
アンピシリン,カルバマゼピン,チオプロニン,アモキシシリン |
紫斑型 |
血液障害や血管壁の障害により出現 |
金製剤,サルファ薬,ペニシリン,アセチルサリチル酸 |
水疱型 |
天疱瘡様の水疱が出現。 |
D-ペニシラミン,チオプロニン,カプトプリル,ブシラミン |
膿疱型 |
背部・顔面に多く、ニキビに類似。 |
カプトプリル,ペニシリン,フロセミド |
多形紅斑型 |
環状紅斑が多発する。 |
カルバマゼピン,アモキシシリン,チオプロニン,フェニトイン, |
扁平苔癬型 |
かゆみが激しく、難治性の苔癬を形成。 |
塩酸ピリチオキシン,カプトプリル,インターフェロンα ,シアナミド |
光線過敏症型 |
日光にあたる部位にできる。 |
スパルフロキサシン,ピロキシカム,フレロキサシン |
蕁麻疹型 |
薬剤使用後数分で現れ数時間で消える。 |
セファクロル,アスピリン,ゼラチン,塩酸セトラキサート |
湿疹型 |
接触性皮膚炎様の多彩な皮疹・かゆみ |
ペニシリン,ペルカイン,クロルプロマジン,クロルチアジド |
紅皮症型 |
全身が赤くなり、落屑を生じる。 |
カルバマゼピン,シアナミド,アロプリノール,アンピシリン |
エリテマトーデス型 |
円盤状ループスに類似・発熱 |
テトラサイクリン,ペニシリン,グリセオフルビン |
固定薬疹 |
特定の薬剤で同一部位に反復する |
アリルイソプロピルアセチル尿素,メフェナム酸,バルビタール |
中毒性皮膚壊死症型 |
30%以上の表皮壊死・剥離 |
フェノバルビタール,クロルメザノンアセトアミノフェン,アロプリノール |
Stevens-Johnson
型 |
10%未満の表皮壊死・剥離 |
ペニシリン,フェノチアジン系,サルファ薬,金製剤,ヒダントイン |
薬剤性過敏症症候群 |
肝機能障害・白血球増多・リンパ節腫張 |
サラゾスルファピリジン, アロプリノール, ジアフェニルスルホン |
薬疹においては、薬剤ごとに好発病型が存在するが、およそ皮膚科で遭遇するすべての皮疹形態を取りうる。逆に言うと、薬剤や個体側の反応性によりあらゆる皮膚病型を取りうるため、皮疹の形態だけでは、原因薬剤は特定できない。また分類困難な皮疹が出現することも多い。このため,診療の現場では皮膚病変が生じた場合、薬疹である可能性を常に考慮し,注意深く病歴・薬剤投与歴を聴取・調査することが重要となる。
薬疹の鑑別には、視診が最も重要であるが、薬剤リンパ球刺激試験(DLST:drug-induced
lymphocyte stimulation test)、パッチテスト、内服試験等を行い、原疾患と十分な区別を行う必要がある。特に内服試験は、危険を伴うため十分な注意喚起が必須である。
参考文献 ・ Up to Date “Drug eruptions”
・ HARRISON’S INTERNAL
MEDICINE 17th Edition Volume1, p343~349, Fauci et al.
・ 今日の皮膚疾患治療指針 第3版 p403-412
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