Numberでなでしこ特集やっていたので、買ってみた。
正直、僕の中でNumberの評価は高くない。
最初にNumberを読み出したのが1990年。イタリア・ワールドカップの特集号だった。それまで極めてテクニカルなオタクなサッカー雑誌しかなかった日本で(まあ、Numberはサッカー雑誌ちゃうけど)、そこに「文章」を組み入れた雑誌はとても魅力的だった。アトランタ・オリンピック、フランス・ワールドカップ予選あたりまでは、僕は夢中になってNumberの「エッセイ」を読んだものだ。野球とか水泳とか、他のスポーツについての文章も魅力的だった。
が、だんだんあの「口調」が鼻についてくる。すぐにそこにドラマを求めたがる、「金子史観」である。たいしたドラマもない現実に無理にドラマを作ろうとするから、嘘臭くなる。民放のニュースや「ドキュメンタリー」みたいな無理な演出があちこちに見えてくる。それがいやで、僕はNumberを読むのをいつしか止めてしまった。
が、今回のなでしこは話が違う。どんなに美辞麗句を並べ、ドラマを語っても大げさにならない。演出は一かけらも必要ない。目の前に展開されたものそのものが、何よりもドラマチックなドラマであり、書き手はそのカラフルなドラマに付け加える言葉を持たない。見たまま書けば、最高のシナリオになる。ドイツ戦での丸山の絶叫は82年WC決勝のタルデリの咆哮を想起させた。準決勝の川澄の飛び込み(僕には3点目よりもこちらのほうが感動的だった)同点弾のダイナミックさ、決勝戦での宮間の同点弾、ワンバックのダイナミックな勝ち越し点(僕の中ではWCベストゴール)、その後の信じがたい澤の同点弾。あまりにもドラマチックなワールドカップだった。
今後、何十年経ってもこの年のなでしこジャパンはサッカーの歴史に残り続けるだろう。2011年のミラクルなNadeshikoとして。1958年や1970年のブラジル、1986年のアルゼンチン、2010年のスペインのように、未来永劫、世界中に語り継がれる伝説のチームとなるだろう、間違いなく。Numberの写真を見てあのときの試合を思い出すたびに、僕は涙ぐむ、ほんと。それくらい素晴らしいワールドカップだった。僕の中でのNumberは本当に語るにたるドラマが目の前にあって、久々に復権したのだった。
なでしこ特集、良かったですね。
確かにNumberはライターの主観がモロに入り込んでいるので、ときにとびぬけた素晴らしい文章がでる一方で、取り上げている対象(スポーツ)そのものの魅力をスポイルして伝えていることも多々ありますね。
息子たちはNumberよりもサカマガやダイジェストの方を好んで読んでいます。
とはいえ、マイナー競技の競泳をちょこちょこと取り上げてくれるのはありがたいのと、自分の関心があまり向いていない競技についても読まざるを得ないので(それが新たな関心を喚起してくれることがあります)愛読しています。
投稿情報: Non_takahata | 2011/08/16 10:49