SMA症候群について
Ⅰ. SMA症候群とは
十二指腸水平脚がSMA(Superior Mesenteric Artery:上腸間膜動脈)に圧迫されることで閉塞し、嘔吐や腹部膨満などの腸閉塞様症状を引き起こす疾患。上腸間膜性十二指腸閉塞症ともいう。
Ⅱ. 病態
SMAの腹部大動脈からの分岐角は腸間膜脂肪により通常45〜60°に保たれており、その下で十二指腸が大動脈と交叉している。この分岐角が小さくなり(5~15°)、SMAが十二指腸を大動脈に対して押し付けることでSMA症候群となる。分岐角減少の原因には主に、極度の体重減少による腸間膜脂肪の減少と、SMAが尾側に牽引されることによる解剖学的な構造変化がある。前者には悪性腫瘍など消耗性疾患、神経性食思不振症、外傷や熱傷、長期臥床後、後者にはTreitz靭帯の高位付着、体幹ギプスによる脊椎過進展状態、脊柱側弯症の手術後、といった要因がある。
また、BMIが低いほど大動脈とSMAとの距離・分岐角は小さくなる傾向にあり、特にBMIが18未満の脊柱側弯症手術後の若年者に有意に多い。
Ⅲ. 症状
食事により増強する上腹部痛、嘔気・胆汁性嘔吐で、腹臥位・左側臥位・胸膝位で軽快、仰臥位で増悪する。
Ⅳ. 診断
食事摂取により増強し、体位により変化する上部消化管閉塞症状があれば本疾患を疑い、腹部単純X線、エコーを施行し、上部消化管造影、CTにより確定診断する。腹部単純X線では、上腹部がgas less patternで不均一な透過性を示し、胃泡が拡大しているのが認められる。腹部CTでは、胃・十二指腸に多量の残渣・拡張を認め、周囲臓器を圧排しているが、小腸・大腸には拡張はない。また、上部消化管造影では十二指腸近位部の拡張と水平脚中央での急激な断列像、逆蠕動、造影剤の振子運動などが特徴である。
Ⅴ. 治療
基本的には保存的治療を行う。急性発症の場合には、胃管挿入で胃内容物を除去し胃十二指腸の減圧を図り、輸液による体液管理、中心静脈栄養や成分栄養による栄養管理を行う。慢性経過の場合には、食事を少量ずつ分割摂取し、食後は腹臥位または左側臥位をとるようにする。体重減少を元に戻すことで軽快することが多い。
保存的治療が無効な場合や再燃を繰り返す場合には、十二指腸吻合術、Treitz靭帯切離術などの外科的治療が行われる。ただ、手術を受けても、特に高齢者では症状軽快の時期が短い場合が多く、軽症であるうちに診断し内科的治療を行うことが望ましい。
【参考文献】
1) 「ハリソン内科学 第2版」
2) UpToDate Superior
mesenteric artery syndrome, 2011
3) MyMed
http://mymed.jp/di/gse.html
4) Ozkurt H, Center MM, Bas
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Epub 2007 Jul 24.
5) Smith BG, Hakim-Zargar M,
Thomson JD. Low body mass index: a risk
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