僕は基本的に、講演については要約とか抄録とかを用意しないことにしている。そのことは前にも書いたが、未だに抄録を何字で書いてくれ、要約を用意しろという要求が絶えない。正直困っている。
要約とか抄録を用意しない理由はいくつもある。
1.僕は昨年から基本的にスライドなしでトークしている。噺家の落語とか、ライブと同じで、ある程度ワンセットの「ネタ」は用意しておくのだが、話す相手や時節、会場の空気に応じて内容を微調整する。したがって、どんな話になるのかは厳密には当日になるまで(本人含めて)分からない。
2.要約でネタばらしをしてしまうと、本番の面白さが目減りする。こんな話をしますよ、となぜ予告せねばならないのか。僕は映画でも小説でも、要約やらあらすじなどは前もって読まない。
3.1時間なら1時間、いただいた時間で話す限りは、「1時間かけて話さないと伝わらない」話をしたい。180分なら180分なりの。15分なら15分なりの。それを100字とか200字で要約することは原理的に不可能である。それができるのなら、1時間かけて話すという時間のムダを省き、「要約読んどいてね」で終わりのはずである。
4.1−3のように価値の低い要約・抄録であるが、その価値の低いもののために時間をかけて物を書くのはもったいない。僕は6000字くらいの原稿は数時間あれば(たいていは)書くことができるので、数百時程度の原稿書きは物理的には不可能ではないが、そんな時間があればもっとほかのことをやりたい。
5.講演依頼は時間がないのでいまはお断りすることが多いのだが、それでもどうしても、、、というときだけお引き受けしている。ただ、残念なことに、依頼時点では(それはたいてい1年以上前に遡るのだが)要約、抄録の話はまったくないのに、突然「抄録を何月何日までに出せ」と当然のように要求してくることが多い。こちらもたくさんの仕事を抱えており、予定をたてて仕事をしているのに、突然そのような割り込み仕事が入るのはとても困る。
というわけなので、僕に講演を依頼される方は、誠に申し訳ありませんが上記の事情を斟酌して、要約・抄録を要求しないでいただきますよう、心からお願い申し上げる次第です。
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