これも学生レポート。難しい課題でしたが、よく考えてくれました。若い人のほうが、クールに問題を考えられるのかな?
日本人は今後ユッケを食べてもいいのか?
日本人は今後ユッケを食べてもいいのか?
近年、日本でも焼肉店の定番メニューとして定着しているユッケだが、ユッケの安全性について論じたいと思う。しかし、その前にそもそもユッケとは、何であろうか?
ユッケとは、生肉を使った韓国式のタルタルステーキ様の料理である。生の牛肉を細切りにし、ゴマやネギ、松の実などの薬味と、醤油やごま油、砂糖、コチュジャン、ナシの果汁などの調味料で和え、中央に卵黄を乗せて食す。つまりいろんな調味料などの飾りつけがあるにしろ、まさに生の牛肉を食べるのである。
今回、富山で起きたユッケに起因すると思われる腸管出血性大腸菌による食中毒事件では有病者数169人、入院者数17人、死亡者数4人が発生し、ユッケの安全性について注目が集まった。実際はその安全性はどうなのであろうか?厚労省より発表されている食品の食中毒菌汚染実態調査1)によると、ユッケで使用される「牛結着肉」による食中毒発生件数(腸管出血性大腸菌によるものを含む)は野菜等と比較すると発生件数は多いが、牛レバーや鶏肉と比して発生件数が特別多いわけではない。さらに、食中毒による死亡者数はというと、今回の事件以外では、腸管出血性大腸菌による死亡者は平成15年以降、発生していない2)。例年、日本国内の食中毒による死亡者(とは言っても毎年1桁ではあるが)の大半は、フグ毒による死亡者であるのだ3)。さらに、ユッケの本場である韓国では、日本と比較して、多くのユッケが食されていると予測され、一定の確率で食中毒も発生している4)。それに対して行政(Korea Food and Drug Administration)主導で、一定の衛生基準と抜き打ち検査を施行、さらに殺処分してから一日以内で食すことを推奨し、食中毒発生業者をHP上で公開する4)といった対策を取っている。結果として、ユッケによる食中毒は起こっているもののそれが社会問題化するような事態には陥っていない。
腸管出血性大腸菌による食中毒は、一般的に食肉を75度以上で1分以上加熱することで防げると言われており、たったこれだけの手間でリスクを回避できるのであれば、私自身は敢えてユッケを食したいとは思わない。しかし、嗜好は人により異なる。上記から言えることは、食中毒のリスクを理解したうえで、それでもユッケを食べたいという人に対して、我々は現時点でそれを止めるのに十分な根拠を持っていないということだ。結局のところ、ユッケに関しては、その他の多くの食物に関してそうであるように、食すかどうかは自己責任で判断していただくことになる。喫煙は体に悪いことを重々承知していながら、それでもタバコを吸いたいという人を、我々が止められないのと同じ理屈である。
ただし、免疫力が弱く、自己判断ができない、自己責任がとれない小児に関しては別問題である。今回の事件でも、父親の食べていたユッケを、一口だけ食べたいといって、少しだけもらった子供が犠牲者となった。大人が食すのは自己責任であるとしても、私たちは小児がユッケを口にするのは避けなければならないだろう。子供が喫煙するのを、我々社会は止める権利と義務があるのと同様の理屈である。
1) www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/dl/110330-1a.pdf
2) http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/03.html
3) http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/03b.html
4) http://kfda.go.kr/fm/index.do
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。