問い合わせがあったので、こちらにもアップします。感染対策に限定した情報で、それ以外の災害対策、医療については記載していません。ご了承ください。
なお、以下の話は災害対策上の事実部分を記載するものです。よって、その内容は被災者の方や(僕のように)知人が被災地にいて安否を気づかっていると言う観点からは心象を害するかもしれない内容が含まれています。その点、ご了承くださいませ。なお、この内容転載フリーです。質問などにも
岩田健太郎 kentaroiwata1969アットマークgmail.com
にご連絡いただければ、可能な限り回答します。なお、これは岩田の見解であり、神戸大学、神戸大学病院、神戸大学都市安全研究センターの代表的な見解というわけではありません。
災害対策に関連した感染症について、頻度の高いものから申し上げます。
1.かぜ、インフルエンザ、下痢症
避難所での密な生活と水不足のためです。トイレや水の確保が大切になります。水痘、結核の懸念もあります。N95はあまり現実的ではないので、通常はサージカルマスクが役に立ちます。下痢症は水不足の状態では死亡のリスクがありますので、軽く見てはなりません。通常は止痢薬は「相対的に禁忌」とされていますが、避難所での不便な生活を考えると、ロペミン等の処方は正当化されることも多いです。比較的治癒しやすい水痘ですが、水不足の時は小児の水痘が脱水、ショックの原因になりますから、可能な限りの隔離が望ましいです。
2. 外傷に関連した感染症
破傷風を含みます。破傷風トキソイドと(必要でかつ可能ならテタノブリンも)、外での外傷では3日程度の抗菌薬(オーグメンチンなど)が処方されることが多いです。
3.津波関連の感染症
(vulnificus)を含むビブリオのリスクはありますが、冬ではそのリスクは低めだと思います。レプトスピラ、A型肝炎、エアロモナスなども可能性はありますが、上の1,2に比べると今回の地震におけるインパクトは小さいと思います。
4.血流感染
普段より清潔操作ができない入院患者、透析患者において
最後に、死者から異臭が漂うと感染を懸念する人が増えますが、遺体から空気感染、飛沫感染することはまずありません。地震のあるときに遺体の焼却をするのは危険ですし身元確認ができなくなるので、安易な火葬はやめるべきです。出血からHBVなどの感染は可能性があるので、手袋は有効です。
なお、頻度的には高齢者の肺炎や尿路感染の受診が多いです。平時に多い事象は緊急時にも当然多い
テレビを見ていて、本当に胸がふさがる思いがします。まだ安否確認ができていない友人知人もいます。現地で医療活動などを行っている皆さん、ご苦労様です。皆様の安全を心からお祈りします。
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