慶応大学病院の香坂俊先生からの報告です。ご本人の許可を得て転載します。ご苦労様でした。
昨日まで気仙沼の方に行っておりました。役に立つ情報があるかも知れませんので、情報共有させていただきます。
慶応のチームが「ベース」を築くようにと指示を受けたのは、気仙沼K WAVEという総合体育館です(指示は毎朝DMAT[Disaster Medical Assistance Team]の司令が出します)。DMATは気仙沼で支援が必要とされる場所を12ヶ所に特定しており、そこに各大学のチーム(日大、帝京、聖マリアンナなどの大学と徳洲会が一緒でした)や混合部隊を送っています。
「ベースを築く」とはつまり診療所をつくれということです。今の時期は外傷やCrush症候群などを対象とする災害発生の超急性期は過ぎており、ある程度しっかりとしたプライマリケアを行うことのできる設備の設立に尽力する必要がありました。
おおよそ130-150人くらいの方がこのベースを毎日訪れ、医師二人と看護師二人でさばきます。カルテはなく、名前、年齢、診断、処方を一行で書き、それを後ろから薬剤師さんが見ていて即座に処方を袋に詰めて渡すというシステムで、何とか時間内に乗り切れます。完全なボランティアで、保険証の確認などを一切省略しているから可能なやり方で、決して普通の状況ではきません。
また、幸い物資は集まりつつあります。薬が足りないということは滅多にありません。しかし、風邪や花粉症の中に普通にDKAやADHFが混じっているところが怖いです。あと、小児の患者さんに対しては全く「カン」が働かないので頻繁にフォローアップをしていました。検査は全くできないので、卒業してから一番真剣にPhysicalを取りました。
診察終了後は体育館内の四つの居住区の重症例を回り、反省会を行い、DMATに報告し一日を終えます。移動と現地の病院との連絡の関係もあり、出発は午前6:30、戻るのは午後9:00くらいでした。
【今後の展望】
・今までは高血圧ならアダラート、熱があったら抗生剤といった極めてざっくりとしたシステムであったが、もう少しきめ細かいケアができるような体制が望ましいと思われます。スペシャリストよりプライマリケア全般に精通したオールラウンダーが望ましい。
・Physicalの技量はMust。またこれからは感染症のことがますます問題になってくると思われます。
・避難されている方々は極めて我慢強く、かつ遠慮するので、そういった垣根をこちらから超える必要があります。元々医療過疎地であったせいか、都心と考え方は違います。どんどん踏み込んでいく姿勢が求められているように強く思いました。
・避難所での娯楽が不足しており、音楽を演奏できるような方はその用意があると重宝されると思います。人々は明るいニュースを求めています。
香坂 俊
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