なるほど、過去の歴史を今の目線で評価するのはフェアではない。しかし、森鴎外は当時の自分の考えと決断をアンフェアと判断したからこそ「舞姫」を書いたのだろう。当時の目から考えても、少なくとも森のなかでは自らの決断、外国人の恋人を捨て、母国に送り返すという判断を「非」と考えたのだろう。でなければ、小説が小説のテーゼを為すわけがない。
森鴎外は医学の世界では脚気の原因を見誤り、観念論で多くの陸軍兵士を死に追いやった「愚物」である。同時に、文学界の大立者でありながら、愛する人を自らの立身出世のために捨てた「俗物」でもある。その彼をあえてテーマに挙げ、漱石とコントラストをなしながら表現した関川・谷口の思いを、僕らはしみじみと考え入る必要がある。
森鴎外は医学の世界では脚気の原因を見誤り、観念論で多くの陸軍兵士を死に追いやった「愚物」である。同時に、文学界の大立者でありながら、愛する人を自らの立身出世のために捨てた「俗物」でもある。その彼をあえてテーマに挙げ、漱石とコントラストをなしながら表現した関川・谷口の思いを、僕らはしみじみと考え入る必要がある。
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