山内雄司という人のコラムを読んだ。
http://wsp.sponichi.co.jp/column/archives/2010/06/post_1613.html
勝っただけではダメで、勝ち方が大事だという。しかし、その直前にはこう言っている。
http://wsp.sponichi.co.jp/column/archives/2010/05/post_1585.html
「ただ、もはや本大会から逃れることはできない。ならば、もう気取ることだけはやめて欲しい。ベスト4だの、やるからには優勝を目指すだの戯言は抜きにし て、自らの弱さを認め、サッカーに謙虚に、今できることのすべてをぶつけて欲しい。壮行試合ですら何もできなかったチームに、本大会で多くを望むのは無理 がある。世界を相手に今できることがほとんどないのも分かっている。だから無様でも良いから、むしろ虚栄を脱ぎ捨て、無様なまでにカッコ悪い代表が見た い。」
そうやってかっこ悪く勝ったのだよ。
こういうベイトソンのダブルバインド状態になるようなコメントを出すのはメディアの常套手段となっている。どっちに転んでも文句をいう。見解が変わったのならばそれでもよいが、そうならばそうと表明するのが誠実なやり方だろう。山内氏は彼はサッカーダイジェストという専門誌の元編集長である。サッカー界のメディアがいかに質が低いかがよく分かる。選手の質よりもこちらの方が問題だ。岡田解任論はあちこちからでた(僕も出した)が、自分の発言に落とし前をつけているジャーナリストをまだ知らない。
98年の岡田監督は、1勝1敗1引き分けを目標にして「そんなやる前から負けるような話をして」とメディアにかなり叩かれた。これはベスト16の目標に換言できる。かといって、ベスト4を目標にすると、「そんな無茶な目標立てやがって」と文句を言われる。同じ基準でどっちに転んでも文句を言うのだから、メディアというのはお気楽な商売だ。
ワールドクラスのカメルーンと、ワールドクラスの選手がいない日本で試合をするのだから、勝つためにはあれしかなかったと思う。バルサに対してモウリーニョがやったことを思い出せば分かる。彼はこれで欧州チャンピオンになったのだ。文句なしの勝者である。引いて守るのか前に出て責めるのかは、手段であって目的ではない。手段を目的化できるのはクライフのような希有な巨人だけである。
カメルーンのコンディションが悪くて、日本のコンディションがよかったから勝てたというのはそうだと思うが、4年前はその条件すら満たせなかったのだ。だから、日本は前進している。満足できる状態ではない。今でも一流の監督であればベターなチームになっていた可能性は高かったと思う。いいチームが作れなくて、ぼこぼこに叩かれて、逆説的にタフなチームになったのだ。しかし、カメルーン戦でもし負けていたらこの4年間は完全に水泡に帰したことになるので、やはり非常に価値の大きな試合だった。
オランダ戦に勝つ必要はないと僕は思う。120%の力を出してデンマーク戦でへとへと、ではアトランタオリンピックの二の舞である。ただ、ぼこぼこにやられるのも困る。すでにオランダにはテストマッチやオリンピックの借りがあるのだから、今度やられたら負け癖がついてしまう。日本は甘くみれないぞ、と驚異を覚えられるような試合が必要になる。韓国も北朝鮮も、「なめたらいかんぜ」というメッセージを送ることに成功しているが、カメルーン戦の日本を見てオランダは驚異に思ったりはしていないだろう。
そのためにはカメルーン戦とは逆に「後半に目覚めるチーム」になることだと思うのだが、さてどうなることだろう。
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