今日はチーフフェローのO先生のプレゼン
http://content.nejm.org/cgi/content/extract/362/15/1431
だいぶ、しゃべるほうも聞く方も英語になれてきました。ファシリテーターとしては嬉しい限りです。学生が発言するので、議論も活発になってきました。フェローももっとがんばれ!
ケースはたいへん教育的で、診断のアプローチもちゃんとできました。
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今日はチーフフェローのO先生のプレゼン
http://content.nejm.org/cgi/content/extract/362/15/1431
だいぶ、しゃべるほうも聞く方も英語になれてきました。ファシリテーターとしては嬉しい限りです。学生が発言するので、議論も活発になってきました。フェローももっとがんばれ!
ケースはたいへん教育的で、診断のアプローチもちゃんとできました。
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神戸大学病院では、昨年からアンチバイオグラムを作って電子カルテで見れるようにしていますが、どうも利用率が高くないようです。ので、卒後臨床研修センターでラミネート版を作って初期研修医全員に配ることにしました。裏が白紙だともったいないので、何か書いてくれと言われて書いたのが、下の十戒です。僕がドラフトして感染制御部の荒川先生と李師長に直してもらいました。みなさんも、こういうポケアンチバイオグラム、院内で使ってみませんか?まあ、あまりいないと思いますが、転用ご自由にどうぞ。ところどころ、僕も誰かの言葉をパクっているし。
感染症診療十戒(神戸大学医学部附属病院)
1. 日々是血培。血培2セットなくして院内の抗菌薬使用はないと思え。
2. 病歴、病歴、病歴、病歴、身体診察。診断をつけよ。発熱、CRP高値は「診断名」にあらず。感染臓器を特定せよ。
3. カテがなければ、カテ感染は絶対に起きない。毎日必要性を点検せよ。人は経静脈栄養だけでは生きていけない。本当にそれは必要か?尿カテ1日で尿路感染は3-10%ずつ増加。不用なカテはすぐ抜去。
4. UTIを疑ったら検尿、尿培養も忘れずに。肺炎疑ったら喀痰培養、グラム染色。
5. 原因菌が分かったら原則としてde-escalationせよ。
6. カテ感染はカテの刺入部に所見がないのが90%!カテ感染を疑ったら抗MRSA薬を検討せよ。何でもとりあえず広域抗菌薬と考えない。
7. 今使っている抗菌薬が「効いていない」ときは、薬を変える前に原因検索。脊髄反射ではなく、脳を使おう。
8. 上級医でも間違えていると思ったら意見を述べよ。議論せよ。プロの医師であれ、そのうえで、最後は従え。
9. 分からないときは、分かる人に聞こう。知らないことは恥ではないが、知ったかぶりは恥と知れ。
10. 他科の医師にも他施設の医師にも、胸を張って言えるような感染症診療をせよ。自分にしか通用しないロジックにすがるな。
投稿情報: 09:53 カテゴリー: 感染症 | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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IDATENのほうで、今月締めきりのワクチンに関するパブコメを提出しました。IDATENの若手精鋭たちの原稿で(僕も一本見本原稿書きましたが)、細川直登代表世話人、大曲貴夫前代表世話人、岩田で微調整してつくりました。
青木先生のブログに載せていただいたので、御供覧ください。また、みなさんもぜひパブコメを送ってください。個人でも送れます。厚労省のひとと話をすると個人の意見はあまり聞きたくないようで、学会の見解じゃないとだめなんだそうですが(じゃ、なんでパブコメ募集すんねん!)、ちりも積もれば、ですのでたくさんの意見が集まると良いと思います。同じ事を違う人が言う、ポリフォニックな効果を期待します。なお、パブコメは転送、転載ご自由にどうぞ。
http://blog.goo.ne.jp/idconsult
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495100050&Mode=0
パブコメはどのように処理されているか、誰にも分からないです。だから、こうやって公の場に出しておきます。新型インフルの会議の時も、よく「5月の段階では分からなかったんだからしかたないじゃん」的なコメントが多いのですが、「そんなことありませんよ、2008年12月の神戸大のパブコメでは、、、」と証拠を出すことが出来ます。パブコメの使い方にはこのようなものもあるんです。
http://georgebest1969.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/post-8f6e.html
投稿情報: 09:44 カテゴリー: 感染症 | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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Hospital acquired infections due to Gram negative bacteria
- Peleg et al. NEJM 2010;362:1804
- 2002年には米国で170万の院内感染。100入院注4.5
- 99,000人の死亡
- 米国6番目の死亡原因。ヨーロッパでも似たような、、、
- 50億から100億ドル年間に必要。
- 3分の1は予防可能
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- 耐性は増え、新薬はできていない。GNRには特に問題。
- GNRは院内感染の30%の原因。
- VAP, UTIが多い。
- ICUでは感染の70%!
- 原因菌内訳はアペンディックスに content.nejm.org—1 <http://content.nejm.org/cgi/data/362/19/1804/DC1/1>
-
- 肺炎
- 米国ではVAPが多い。
- 48時間以上で、10−20%発症
- 緑膿菌、アシネトバクター、腸内細菌群が問題
- それぞれ26.4%、36.8%がカルバペネム耐性。
- ギリシャではICUで85%がカルバペネム耐性。マンマミーア
- ポリミキシン耐性も
- 入院、抗菌薬暴露、透析があればリスク高いが、リスク因子にはさらなる研究が必要。
- 診断が大事
- アンチバイオグラムが大事。
- 培養とde-escalationが大事。
- 8日間治療。15日が必要になるのはnon-fermenters
- 予防のバンドルアプローチを
- 定量培養が大事だが、アウトカムとの関連は不明
- CRP, PCT, sTREM-1も使える、、、?
-
- 血流感染
- CRBSIの30%が米国ICUではGNR
- クレブシエラは27.1%3世代セフェムに耐性。10.8%はカルバペネム耐性
- ヨーロッパの一部ではこれ以上に悪い。
- KPCは問題。
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- UTI
- カテでリスクは5−10%/日増える
- 泌尿器のオペ前でasymptomatic bacteriuria治療。免疫抑制でも考慮?
- 大腸菌が多い。
- 米国ではSHV, TEMのESBLが多い。
- 世界ではCTX-M, とくにCTX-M-15
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- エビデンスに基づく病院内感染予防
- ハンド・ハイジーン
- 教育
- システム
- 口腔ケア
- ベッドアップ
- 挿管しなくて良いなら、しない
- サーベイランス
- 気管チューブの上をサクション、in-line tube
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- 治療は、ローカルデータが大事。
- polymyxins (colistin and polymyxin b)耐性は、セラチア、プロテウス、ステノ、セパシア、フラボバクテイルム
- 適切な投与量はいまだ不明
- 1日1回だと、耐性菌、毒性から問題との動物モデル。1日数回に分けた方がよい。
- チゲサイクリンはESBLやカルバペネム耐性菌でもOK。アシネトバクターやステノもいける。緑膿菌やプロテウスはだめ。
- 尿中濃度は低いので、UTIにはダメ。
- VAPでは、イミペネムより効果が低い。Wyethのプレスリリース。文献45
- 血流感染でも血中濃度が低いので、微妙。
- monotherapy?combination?最近はcombinationに耐性菌対策から再度注目できている。
- 感受性分かっているときは、どちらも効果は同じ(シナジーはあまりない)。
- ただし、(のう胞性線維症の)緑膿菌感染に対するアミノグリコシドは、むしろモノセラピーより悪い。
- 点滴の時間を延ばす、吸入もあり。colistimethate sodiumを準備してすぐ使用することが肺毒性予防に。
投稿情報: 13:03 カテゴリー: journal club | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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最近、学内外で査読をする機会が増えてきた。一円の得にもならなければ、名前が売れるわけでもないが、とても勉強になるので進んでやるようにしている。査読という体験そのものが素晴らしい勉強だし、他の査読者のコメントを読むのも(反面教師も含めて)よい体験だ。普通に論文を読むよりもずっと深い体験が出来る。
つまるところ、論文のレフリーも、サッカーのレフリーと同じである。全体像が俯瞰できて、論文や掲載雑誌の価値がどう高まるか、という高い視点から見るのが大切である。
もちろん、校正的なチェックも大事なので舐めるようにして読むが、かといってあまりに重箱の隅つつきなのは困る。特に、論文が議論していない部分に、「それに言及がない」とか「データがない」といちゃもんをつけるのは見苦しい。豚さんに空を飛べと言ってもねえ。
一度など、「学会が薦めていない検査法はよくないのではないか」とレフリーに言われたことがある。既存の知識のフレームワークの枠内だけで議論をするのなら、論文である意味がないのだが。
あまりに厳密に求めすぎて、本質的な議論がお留守になってしまうことも時々見る。ぴっぴぴっぴとなにかにつけてヒステリックに笛を吹くレフリーが、良い試合をつくらないのと同じだ。それぞれの雑誌にはそれぞれの許容レベルがある。科学といえども人間の営為である。全ての論文をNature, Scienceなみの要求度でばっさばっさ切りまくっても仕方がない。
論文に瑕疵があることそのものは問題ではない。それが瑕疵と認識され、なぜ瑕疵が生じたのかを議論でき、それでも言えることがあれば、臨床論文としてはまずよいのである。
そして、それがさらに説得力のある良い論文になるよう、提案をして、reviseしてもらう。言葉を尽くして、まだ見ぬ著者とコミュニケーションをする。これをinterrogationとしてではなく、accusationとしてではなく、上手にやるさじ加減を模索したい。ちょうど、サッカーのレフリーが試合の流れを切らないよう、選手がキレないようにレフリングするように。レフリーも良い論文作りのために一役買う、参加者としてのレフリーが好ましい。あちらの著者とこちらのレフリーという対立構造ではなく(同じことは、病院評価者と病院の関係においても同じだ、と主張したい。アメリカでも日本でも、病院監査が懲罰的すぎるのが問題なのだ)。
peer reviewも手放しで褒めて良いシステムではない。いろいろな問題がある。このような問題を飲み込んで、煮え切らない問題を煮炊きするのだ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%BB%E8%AA%AD
そう言う意味では、レターも大変意味の大きな営為である。これも出世とは何の関係もないけれど、知的トレーニングとしては価値の大きな行為だ(単にジャーナルクラブを内輪でやってあーだ、こうだというよりも、第三者に読まれる形でレターにする方がずっと知的レベルの高い作業である。そこでは、たんなるいちゃもんづけがずっと許容されにくくなる)。研修医にもだから、Jクラブで読んだものはレターにする気持ちでやって、と要求している。こないだ、一本書いてもらったけれど、残念ながら締め切りすぎていた。NEJMは3週間が限度です、、、、
できるだけ、論文や教科書は英語を使うよう、研修医や学生にも唸がしている。ただし、日本語がダメ、という意味ではない。日本語のアドバンテージはもちろん、ある。
HIVのガイドラインはDHHS、IASだけでは分からない「日本の事情」がある(それは生物学的にもあるし、社会学的にもある)。自分の主要テーマでない領域は、早読みできる日本語でさっと処理した方がタイムマネジメント的には賢い選択だ。今、RAの治療についてのオーバービューを故あってざっと復習しているが、これには岸本先生の「すぐに使える」が便利である。すぐに使える、というだけあって本当にすぐに使える。Kellyなんかを開いて読むとこれよりずっと時間がかかるし、コンセプトの理解の甘い僕には理解がぼんやりするだろうし、日本の添付文書では、みたいなペリフェラルな知識はさらに文献をあさらねばならないだろう。だから、はしょっちゃう。
でも、学生や研修医には英語をよめという。ここで泣き泣きがんばって読んでおくと、それが後々アウトプットできる良い貯金になるからなのです。大人はずるいんです。がんばって。
投稿情報: 12:03 | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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最後はクリプト。1週間でもいろいろ体験できますね。gattii知ってたら、5年生としては上出来です。
クリプトコックス髄膜炎の治療
クリプトコックス症はCryptococcus neoformansによって起こる深在性真菌症だが、最近、より重症で予後不良のC.gattiiが太平洋岸北西部で流行している(①)。とくに脳髄膜炎を起こした場合は致死率が高いため、すばやい対応が必要とされる。
髄液排液開始圧>25cmH2Oの場合
死亡率が上昇することが知られており、腰椎穿刺により早急に減圧を図る。
頻回の減圧が不可能なら脳室腹膜シャントも考慮する。
リスクファクターとして血液悪性腫瘍患者、免疫抑制治療を受けた実質臓器移植レシピエント、ステロイド投与中、進行したHIV感染によるCD4+Tリンパ球<200/μℓの患者が挙げられる(②)。治療法は、これらの免疫学的異常の有無により異なっている。
・免疫学的異常がない場合
AMPH-B (0.5-0.8mg/kg/日 1日1回静注) + 5-FC (25mg/kg/回 1日4回経口)を
発熱が軽快して培養が陰性になるまで(〜6週)
その後FLCZ (200mg/日1日1回経口10週以上)
・免疫学的異常がある場合
HIV感染を伴う患者では積極的治療が必要で、導入療法(真菌感染量を低下させ症状を
軽減させる)と維持療法(臨床症状再発を防止する)の2つを行う。
導入療法
AMPH-B (0.7mg/kg/日 1日1回静注) + 5-FC (25mg/kg/回 1日4回経口)を2週間
その後地固め療法:FLCZ (400mg/日1日1回経口)を髄液培養が無菌となるまで(10週間)
可能ならHARRT開始
維持療法
FLCZ (200mg/日1日1回経口)を10週間または髄液培養が無菌となるまで
ただし、CD4≧100/μℓとなり、全く無症状の状態が6ヶ月以上続くなら中止してよい
(中止する前に腰椎穿刺で髄液の性状を確認する)
AMPH-B(ファンギゾン)
細胞膜のエルゴステロールに結合して作用する。炎症時のAMPH-Bの髄液移行率は非常に悪いとされるが、初期、とくに5-FCとの併用は有効でその後の再発率も下げる(③)。輸入細動脈を収縮させ尿量が減少すること、K・Mg・HCO3-の排泄を増加させることから腎毒性に注意する。腎機能などの問題でAMPH-Bを使用しにくい場合は、リポゾーム製剤(アムビゾーム)にかえる。症状に応じて増減できるが、1日総投与量は5mg/kg(力価)とする。また、AMPH-B投与前に生食液250mℓくらいを点滴静注しておくと腎機能障害が出にくい(④)。
5−FC(アンコチル)
真菌内で5−FUとなり核酸合成を阻害する。他の抗真菌薬と拮抗作用がない利点を持つが、ピーク値80mg/ℓ、トラフ値40mg/ℓを超えると骨髄毒性を招くためモニターが必要である。
FLCZ(ジフルカン)
エルゴステロールを作る酵素を阻害する。髄液移行率が高く、地固め療法に有効である(③)。経口からの吸収率が高く、腸管循環により半減期が長いのでコンプライアンスが良い。一方、P450、CYP2C9、2C19、3A4など様々な薬物相互作用があることに注意する。
参考文献
①サンフォード感染症治療ガイド2008(第38版) pp166-168
②Harrison’s PRINCIPLES OF INTERNAL MEDICINE 17TH EDITION pp1251-1253
③臨床に直結する感染症診療のエビデンス pp323,324
④レジデントのための感染症診療マニュアル 第2版 pp419,444,445
治療方針については以下の文献を参照した
サンフォード感染症治療ガイド2008(第38版) pp166-168
深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2007 pp45-48
投稿情報: 23:04 カテゴリー: 感染症 | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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これもよく調べてきました。週二回というハイペースなレポート提出なのですがね、、、
妊婦健診で重要な感染症
梅毒
梅毒トレポネーマによるSTDの一つで、五類感染症の全数把握対象である。経胎盤感染で先天梅毒を起こしうる。症状の現れる時期によって胎児梅毒(妊娠6ヶ月から早死産)、乳児梅毒(出生後〜3ヶ月までに梅毒症状、特に皮膚・粘膜・内蔵)、晩発性先天梅毒(学童期〜思春期までに梅毒症状、特にハッチンソン三徴候や中枢神経梅毒)に分けられる。ペニシリンGで治療する(テトラサイクリン系は胎盤を通過して胎児の骨・歯に蓄積し、母乳中にも排泄されるので禁忌)。中国では経済と性風俗産業の発展に伴い、近年梅毒患者数が激増している(2008年で患者数25万7000人、5万人/年のペースで増加、先天性梅毒は9480人)(①)。
・B型肝炎ウイルス
HBe抗原陽性妊婦の児はハイリスクであり、予防対策が行われないと85%はキャリアとなる。陰性妊婦の児はほぼキャリアとなることはないが、劇症肝炎が起こることがある。よって、母の抗原陽性・陰性に関わらず予防対策(HBs抗原・抗体検査、HBIG筋注、HBワクチン皮下注)を行う。しかし、キャリア化児の約 3割がHBIG・HBワクチン併用予防法からドロップアウトしていたことが判明した(②)。対策しても5%の児はキャリアとなる。
・風疹
妊娠初期に妊婦が風疹に初感染すると、経胎盤的に胎児にも感染し、先天性風疹症候群CRS(先天性心疾患、白内障、難聴)が発症することがある。感染が妊娠の早期であるほど胎児への感染率・CRS発症率は高い(感染率は妊娠10週までが90%、16週で40%、20週以降ではCRSは起こらない)。また、CRSの95%は初感染、5%が再感染なので、妊娠初期の風疹初感染を予防・早期診断・治療する事が重要である。日本では2006年からMRワクチン2回接種になっているが、抗体陰性またはHI抗体≦16倍なら産褥退院時または1ヶ月検診時にワクチンを接種する(授乳してもよい)。
・C型肝炎ウイルス
母子感染率は10%弱で、予防法はまだない。
・ヒト免疫不全ウイルス
母子感染の経路は経胎盤、産道、母乳の3つであり、約70%は分娩時周辺に起こるとされる。無治療では25〜30%の母子感染率がある。早期の治療開始が必要なためスクリーニングは妊娠初期に行う。しかし、スクリーニング陽性率は0.1%(82/82290)だが、確認検査陽性率は0.0085%(7/82290)と偽陽性率が非常に高い(③)。診断がつけば、妊娠14週以降からジドブジン(多剤併用)療法を行う。分娩時の子宮収縮によりウイルスが胎児側に流入しやすくなるので、破水・陣痛発来前に帝王切開する。新生児は出生後8〜12時間までにジドブジン経口投与(点滴用、シロップは国内未承認)を開始し、6週まで続ける。母乳は禁止する。
・トキソプラズマ
妊婦が初感染を起こした場合、40%が胎児感染を、さらにその40%が先天性トキソプラズマ症(水頭症、脈絡網膜炎、頭蓋内石灰化など)を発症する。妊娠中の初感染率は0.5%以下と低いので全例にスクリーニングを行うか意見が分かれるが、垂直感染を予防できるので行う施設が多い。妊婦初感染で胎児感染に至っていなければアセチルスピラマイシンを、胎児感染していればピリメタミンとサルファ剤の合剤を使うが、保険適応外である。
・成人T細胞白血病ウイルス
母がHTLV−1キャリアなら、10〜30%で母子感染が起こる。しかし、感染の主な経路は母乳なので人工栄養により予防可能である(ただし2〜6%には感染)。
クラミジア
最も頻度の高いSTDで特に若年女性に増加している。無症状の保菌者が多数存在するため、早期検診・検査が重要である。妊婦のクラミジア感染は約5%にみられ、流早産の原因となることもあるとされる。また、産道感染により新生児結膜炎や新生児肺炎を発症させる。近年、抗原陽性妊婦に対する抗菌薬投与で母子感染は減少している。
参考文献
産婦人科診療指針2版 中外医学社
①Joseph D. Tucker, M.D., Xiang-Sheng Chen, M.D., Ph.D., and Rosanna W. Peeling, Ph.D., Syphilis and Social Upheaval in China.
The NEW ENGLND JOURNAL of MEDICINE 2010;362:1658-1661
②2004年厚生労働省調査報告(森島恒雄分担班)
③HIV感染妊婦の早期診断と治療および母子感染予防に関する臨床的・疫学的研究(主任研究者:稲葉憲之)
投稿情報: 23:03 カテゴリー: 感染症 | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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これは定番、GBS。抗菌薬出すのは、分娩時っす。
妊婦のGBS(Group B streptococcus)感染
【疫学】
妊婦のGBS感染は無症候性細菌尿、UTI、膣内感染、子宮内感染、子宮内膜症、菌血症で見られる。
GBSは10%~40%の妊婦の膣や腸管に常在している。GBSが侵襲性に感染すると、妊婦の絨毛膜羊膜炎や流産・早産を引き起こすことが知られている。また、新生児は経産道的にもGBS感染を起こす。
1999年~2005年のCDC surveillance studyでは、約0.12%の妊婦がGBS感染をしており、この内の約半数では胎児死亡や流産、新生児感染、新生児死亡が見られた。
【スクリーニング】
流産や早産、あるいは新生児のGBS感染を防ぐには、GBSが常在している妊婦を特定することが最重要である。
妊婦にGBSが常在しているかどうかは培養検査で調べる。
また、新生児のGBS感染のリスクファクターとして以下が挙げられる。
・分娩中の発熱(38℃以上)
・37週未満の早産
・破水が18時間以上継続
・過去の出産で新生児がGBS感染
・今回の妊娠中にGBS細菌尿
ただし感染していても1つも示さない場合もあるので、リスクファクターからのみのスクリーニングは好ましくない。
培養検査は、すべての妊婦で、35週~37週の内に行われるのが望ましい。ただし過去の出産で新生児がGBS感染した妊婦、あるいは妊娠中にGBS細菌尿が認められた妊婦はスクリーニングを行わずに直接抗菌薬治療に移行してもよい。
培養は、感度向上のため、直腸と膣からの2箇所の検体で行われる。感受性テストは、ペニシリン耐性菌が今のところ見られていないので、不要である。しかし妊婦が重度のペニシリンアレルギーの場合、代わりにエリスロマイシンまたはクリンダマイシンを使用するため、これらには感受性テストを行った方がよい。
培養検査には24時間~48時間かかる。
その他のスクリーニング方法として、PCRによるものもある。これは約40分で診断可能であり、将来的に培養に代わるスクリーニング法として有効である。一部では感度96%、特異度98%という好成績を示したデータがあるが、異なる施設での研究結果が出揃うまでは使用を避けた方がよい。コスト面や利便性の改善も期待される。
【分娩時GBS感染症予防対策の適応】
膣内のGBSは抗菌剤の投与によって除去することはできるが、投薬を継続し続けない限り再定着するため、GBS感染症に対する抗菌薬は分娩時に投与される。
<適応例>
・スクリーニングで直腸または膣でGBS陽性
・前児がGBS感染症
・ 今回の妊娠中にGBS細菌尿
・GBS感染の有無は不明であるが、分娩時に38℃以上の発熱、または妊娠37週未満の早産、または
18時間以上の破水のいずれかの場合
<非適応例>
・前回妊娠時はGBS感染陽性であったが、前児は非感染児であり、現在はスクリーニングで
GBS感染陰性の場合
・GBS感染陽性であっても帝王切開予定である場合
・分娩時に38℃以上の発熱、または37週未満の早産、または18時間以上の破水のいずれかの場合で
あっても、 スクリーニングでGBS感染陰性であった場合
【予防対策】
胎児では投薬開始から約30分で十分な血清濃度を得ることができ、母体では投薬してから約3時間で十分な抗菌作用が得られる。よって、 抗菌薬は分娩の少なくとも4時間前から開始され、分娩終了時まで継続して投与されることが望ましい。
regimenとしては以下が推奨される。
・PenicillinG (5 million units intravenously initialdose,then2.5 million units intravenously
every four hours)
・Ampicillin (2 g intravenously initial dose,then 1 g intravenously every four hours)
ただしペニシリンの方が狭い抗菌スペクトラムを持ち、アンピシリン耐性菌を生まないためにもペニシリンの使用の方が望ましいとされる。
※妊婦がPenicillinに対してアレルギーを持つ時は以下が推奨される。
・low risk for anaphylaxis:Cefazolin (2 g initial dose, then 1 g every eight hours)
・high risk for anaphylaxis :Clindamycin (900mg intravenously every eight hours)
If the GBS isolate is resistant Clindamycin
Vancomycin (15 to 20mg/kg every twelve hours in patients
with nomal renal function)
※妊婦がスクリーニング未実施で、切迫早産の可能性がある場合、すぐにGBSのスクリーニングを行い、
その結果が判明するまでの間、投薬を行う。もし培養結果が陰性と出た場合は投薬を中止してもよい。
参考文献:Karen M Puopolo,MD,PhD, Lawrence C Madoff, MD, Carol J Baker,MD.
Group B streptococcal infection in pregnant woman. Up to Date, 2009
Carol J Baker,MD.
Chemoprophylaxis for the prevention of neonatal group B streptococcal disease.
Up to Date, 2010
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これも学生レポート。無症候性細菌尿の治療後にフォローの培養が必要とは知りませんでした。勉強させていただいています。治療失敗があると毎月チェックなんだ、、
妊婦の無症候性細菌尿
【妊婦と感染症】
母子感染の主な病原微生物はウィルス、細菌、クラミジア、真菌、原虫である。感染形式は時期によって胎内感染、
分娩時感染、授乳時感染に、感染経路によって経胎盤感染、上行性感染、母乳感染に分けることが出来る。妊娠中に
生じる最も一般的な細菌感染症に尿路感染症がある。
妊娠中は粘膜のIL6や血清抗体の反応が下がる。このように妊婦は免疫系が抑圧され、さらに胎児・新生児の免疫系は未熟であることから、感染に対するリスクが大きくなる。妊婦が感染すると胎児・新生児は流産、早産、死産、IUGR、発達奇形、先天性疾患、生後持続性感染が生じることがある。
【Asymptomatic bacteriuria】
特に症状がない人で、尿培養が陽性の場合、Asymptomatic bacteriuria(無症候性細菌尿)と呼ぶ。
妊婦の2〜7%に細菌尿が見られる。細菌尿は、早産や低体重児、分娩異常のリスクファクターであることが知られている。感染経路や感染微生物は非妊婦の細菌尿と同じである。妊娠初期に細菌尿を呈することが多い。妊娠することによって、平滑筋が弛緩し、尿路も拡張するので、膀胱から腎臓へ上行性に感染しやすくなる。したがって細菌尿を呈している妊婦は、非妊婦より腎盂腎炎になりやすい傾向にある。
無症候性細菌尿が適切に治療されなかった場合、約30~40%の妊婦が症候性の腎盂腎炎などに移行し、早産や敗血症の危険性が増加する。無症候性細菌尿が適切な抗菌薬により根治されれば、腎盂腎炎への移行のリスクが70~80%軽減できるため、すべての妊婦に対してスクリーニングが行われる必要がある。
<診断>
診断は、尿培養によってされるべきである。通常に排尿された検体からの培養であれば≧10(5)cfu/mlの菌が連続して2回検出される、あるいは導尿カテーテルからの検体の培養であれば≧10(2)cfu/mlの菌が1回検出されると、細菌尿と診断される。
当然ながら、contaminationの可能性を最小限に抑えて、偽陽性の確率を下げる必要がある。
尿検査などの他の簡易スクリーニングでは、感度、特異度のどちらにおいても尿培養に劣るため、使用すべきではない。また、尿培養では菌を同定して治療方針に役立てることもできる。
スクリーニング検査は、妊娠12〜16週に行われるべきである。再スクリーニングは、低リスク妊婦では一般的には行われないが、高リスク妊婦(尿路奇形、ヘモグロビンS、早産経験のある妊婦など)では考慮すべきである。
<Maternal fetal benefits>
無症候性細菌尿の早期スクリーニングは母子にとって有益である。Cochrane reviewによると、抗生物質による治療をすることによって、無症候性細菌尿をなくし、腎盂腎炎になるリスクを軽減させ、早産や低体重児となるリスクも下げることができる。
<治療>
治療は、short course(3日間)の抗生物質投与が効果的である。当然ながら耐性菌の存在があるので、抗菌薬の感受性テストを行い、適切な抗菌薬を選択することが重要である。
以下のレジメンが推奨されている。
・Amoxicillin (500 mg orally every 12 hours for three to seven days)
・Amoxicillin-clavulanate (500 mg orally every 12 hours for three to seven days)
・Cephalexin (500 mg orally every 12 hours for three to seven days)
<Follow-up>
治療効果判定のための尿培養は、治療完了から1週間後に行われるべきである。約30%の人は一度の short courseでは完治されない。この場合、出産まで定期的に毎月尿培養を行う必要がある。もしfollow-upの尿培養で陽性とでた場合は、同一の抗菌剤をより長く服用するか、他の抗菌剤に切り替えて再度治療する。
参考文献:Harrison’s PRINCIPLES OF INTERNAL MEDICINE 第3版
Thomas M Hooton, MD 他 Urinary tract infections and asymptomatic bacteriuria in pregnancy.
Up To Date. last updated 18 Jan 2010
投稿情報: 22:59 カテゴリー: 感染症 | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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5年生がまとめてきたレポート。なかなかがんばりました。短い時間で。
子供のときに接種すべきワクチン
WHO recommendations for routine immunizationを基に作成。
◆recommendation for certain regions(ある地域において推奨されるワクチン)
(1) 日本脳炎Japanese encephalitis
①病態・感染経路
日本脳炎ウイルスの感染により起こる急性脳炎である。日本においては、小型アカイエカが媒介蚊である。ヒトは、終末宿主であり、感染したヒトを吸血した蚊が感染することはない。ヒトからヒトへの直接の感染もない。
②症状
感染後6~16日の潜伏期を経て、頭痛、発熱、悪心、嘔吐、めまいなどで発症する。小児では、食欲不振、腹痛、下痢などの消化器症状を伴うことが多い。これらの症状に引く続き、項部硬直、羞明、意識障害、易興奮性、仮面様顔貌、筋硬直、脳神経麻痺、四肢の振戦、不随意運動、麻痺、病的反射などが生じる。
日本脳炎患者の20~30%は死亡、約50%は精神神経に後遺症を残して回復する。小児では特に重度の障害を残すことが多い。
③ワクチン
感染を受けて発症した場合、発熱、頭痛、脳炎症状が起こり、重篤な場合は死亡し、また、後遺症が残ることがあるので、ワクチンを用いた感染予防対策がきわめて重要である。現在、日本では不活化ワクチンが用いられている。副反応としては、アナフィラキシー、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、血小板減少性紫斑病などがある。
(2) 黄熱yellow fever
①病態・感染経路
黄熱ウイルスによって起こる重篤な出血熱である。サハラ以南のアフリカと南米で患者発生がある。ネッタイシマカが主たる媒介蚊である。
②症状
潜伏期は3~6日である。典型例では、感染期、緩解期、中毒期の3段階に分けられる。突然の発熱で発症し、悪寒、倦怠感、頭痛、腰背部痛、筋肉痛、悪心、嘔吐を伴う。これらの症状はいったん消失し、緩解期となる。典型例ではその後、発熱、悪心、嘔吐、黄疸、腎機能不全、出血傾向が現れる。致死率は、10~20%である。
③ワクチン
現在、黄熱ワクチンとして入手できるのは、17D株による生ワクチンのみである。黄熱ワクチンと非経口コレラワクチンの同時接種は避ける。(ワクチン同士の干渉で抗体産生が悪くなる。)4ヶ月未満の子供は急性脳炎発症のリスクが高く、禁忌となっている。主な副反応は頭痛、筋肉痛、微熱などであるが、急性脳炎例もある。
黄熱に対する特異的治療法はなく、感染流行地に行く場合には、ワクチンを摂取すべきである。流行国によっては、入国時に予防接種証明書(イエローカード)の提示を要求する国がある。
(3) ロタウイルスrotavirus
①病態・感染経路
飛沫感染、経口感染で侵入したウイルスが消化管に感染する。冬季に発生しやすく、生後3か月~1歳の乳幼児に好発する。
②症状
2日前後の潜伏期の後、突然、嘔吐と発熱で発症し、下痢をきたす。便の性状は白色で、米のとぎ汁状である。
③ワクチン
経口生ワクチンが存在するが、日本では未承認である。ワクチンには、RRV-TV、Rota Teq、RotarixがあるがRRV-TVは副反応として腸重積が問題となり、使用中止となった。また、2010年3月22日、FDAがRotarixの接種について一時的な見合わせの勧告を出した。Rotarixのワクチン中に豚サーコウイルス1型(porcine circovirus type 1: PCV1)のDNAが検出されたためである。感染後の医療費のことを考えると、ワクチン接種による予防が有効かもしれない。
◆recommendation for some high–risk populations(ハイリスク群に推奨されるワクチン)
(1) 腸チフスtyphoid
①病態・感染経路
菌が混入した飲食物を介して経口感染する。小腸パイエル板のM細胞へ侵入して増殖し、初期病巣を形成する。その後、マクロファージに捕えられ、マクロファージ内で増殖し、血中に入る。
②症状
潜伏期は1~3週間で発熱を主症状とする。第1病期では比較的除脈、バラ疹、脾腫が出現する。第2病期では40度台の稽留熱、気管支炎、無欲状顔貌、難聴、心不全などが出現し、下痢と便秘が交互に出現する。第3病期では弛張熱を経て、徐々に解熱に向かう。腸出血、腸穿孔が起きることがある。第4病期では、解熱し回復に向かう。
③ワクチン
腸チフスの予防には、飲食物の衛生管理、患者の隔離、保菌者の管理が重要だが、流行地の多くは、発展途上国であり、すぐには解決されない。流行地に行く際には、ワクチンでの予防が必要である。弱毒生ワクチン(Ty21a、経口で4回接種、妊婦には禁忌)と不活化ワクチン(Vi抗原多糖体、注射により1回接種)が存在するが、日本では承認されていない。おもな副反応は、発熱、頭痛、接種局所での発赤、腫脹、疼痛である。個人輸入を取り扱う医療機関で接種する必要がある。
(2) コレラcholera
①病態・感染経路
水や食品を解して摂取された菌が小腸上皮で定着、増殖し、コレラ毒素が上皮細胞に作用して下痢を惹起する。
②症状
潜伏期は、数時間から5日(通常1日前後)で、水様性の下痢を主症状とする。水様性の便は1日数リットルから数十リットルに及び、嘔吐を伴うこともあり、大量の水分が失われる。半日から1日で著しい脱水状態となる。
③ワクチン
年間100例ほど見られるが、多くは海外渡航者による輸入例である。非経口ワクチン(不活化ワクチン)と経口ワクチン(弱毒生ワクチン、不活化ワクチン)が存在する。日本では、非経口ワクチンが用いられているが、効力、持続性の面で不十分であり、接種は勧められない。接種するのであれば、経口ワクチンを接種すべきであると考えられる。非経口ワクチンでは、接種局所での発赤、腫脹、発熱などがみられることがあり、経口ワクチンでは、腹痛や軟便を認めることがある。
参考文献
・内科学 第9版 朝倉書店
・ワクチンの事典 朝倉書店
・わかりやすい予防接種 改訂第3版 診断と治療社
・横浜市衛生研究所http://www.city.yokohama.jp/me/kenkou/eiken/idsc/disease/rota1.html
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