5年生がまとめてきたレポート。なかなかがんばりました。短い時間で。
子供のときに接種すべきワクチン
WHO recommendations for routine immunizationを基に作成。
◆recommendation for certain regions(ある地域において推奨されるワクチン)
(1) 日本脳炎Japanese encephalitis
①病態・感染経路
日本脳炎ウイルスの感染により起こる急性脳炎である。日本においては、小型アカイエカが媒介蚊である。ヒトは、終末宿主であり、感染したヒトを吸血した蚊が感染することはない。ヒトからヒトへの直接の感染もない。
②症状
感染後6~16日の潜伏期を経て、頭痛、発熱、悪心、嘔吐、めまいなどで発症する。小児では、食欲不振、腹痛、下痢などの消化器症状を伴うことが多い。これらの症状に引く続き、項部硬直、羞明、意識障害、易興奮性、仮面様顔貌、筋硬直、脳神経麻痺、四肢の振戦、不随意運動、麻痺、病的反射などが生じる。
日本脳炎患者の20~30%は死亡、約50%は精神神経に後遺症を残して回復する。小児では特に重度の障害を残すことが多い。
③ワクチン
感染を受けて発症した場合、発熱、頭痛、脳炎症状が起こり、重篤な場合は死亡し、また、後遺症が残ることがあるので、ワクチンを用いた感染予防対策がきわめて重要である。現在、日本では不活化ワクチンが用いられている。副反応としては、アナフィラキシー、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、血小板減少性紫斑病などがある。
(2) 黄熱yellow fever
①病態・感染経路
黄熱ウイルスによって起こる重篤な出血熱である。サハラ以南のアフリカと南米で患者発生がある。ネッタイシマカが主たる媒介蚊である。
②症状
潜伏期は3~6日である。典型例では、感染期、緩解期、中毒期の3段階に分けられる。突然の発熱で発症し、悪寒、倦怠感、頭痛、腰背部痛、筋肉痛、悪心、嘔吐を伴う。これらの症状はいったん消失し、緩解期となる。典型例ではその後、発熱、悪心、嘔吐、黄疸、腎機能不全、出血傾向が現れる。致死率は、10~20%である。
③ワクチン
現在、黄熱ワクチンとして入手できるのは、17D株による生ワクチンのみである。黄熱ワクチンと非経口コレラワクチンの同時接種は避ける。(ワクチン同士の干渉で抗体産生が悪くなる。)4ヶ月未満の子供は急性脳炎発症のリスクが高く、禁忌となっている。主な副反応は頭痛、筋肉痛、微熱などであるが、急性脳炎例もある。
黄熱に対する特異的治療法はなく、感染流行地に行く場合には、ワクチンを摂取すべきである。流行国によっては、入国時に予防接種証明書(イエローカード)の提示を要求する国がある。
(3) ロタウイルスrotavirus
①病態・感染経路
飛沫感染、経口感染で侵入したウイルスが消化管に感染する。冬季に発生しやすく、生後3か月~1歳の乳幼児に好発する。
②症状
2日前後の潜伏期の後、突然、嘔吐と発熱で発症し、下痢をきたす。便の性状は白色で、米のとぎ汁状である。
③ワクチン
経口生ワクチンが存在するが、日本では未承認である。ワクチンには、RRV-TV、Rota Teq、RotarixがあるがRRV-TVは副反応として腸重積が問題となり、使用中止となった。また、2010年3月22日、FDAがRotarixの接種について一時的な見合わせの勧告を出した。Rotarixのワクチン中に豚サーコウイルス1型(porcine circovirus type 1: PCV1)のDNAが検出されたためである。感染後の医療費のことを考えると、ワクチン接種による予防が有効かもしれない。
◆recommendation for some high–risk populations(ハイリスク群に推奨されるワクチン)
(1) 腸チフスtyphoid
①病態・感染経路
菌が混入した飲食物を介して経口感染する。小腸パイエル板のM細胞へ侵入して増殖し、初期病巣を形成する。その後、マクロファージに捕えられ、マクロファージ内で増殖し、血中に入る。
②症状
潜伏期は1~3週間で発熱を主症状とする。第1病期では比較的除脈、バラ疹、脾腫が出現する。第2病期では40度台の稽留熱、気管支炎、無欲状顔貌、難聴、心不全などが出現し、下痢と便秘が交互に出現する。第3病期では弛張熱を経て、徐々に解熱に向かう。腸出血、腸穿孔が起きることがある。第4病期では、解熱し回復に向かう。
③ワクチン
腸チフスの予防には、飲食物の衛生管理、患者の隔離、保菌者の管理が重要だが、流行地の多くは、発展途上国であり、すぐには解決されない。流行地に行く際には、ワクチンでの予防が必要である。弱毒生ワクチン(Ty21a、経口で4回接種、妊婦には禁忌)と不活化ワクチン(Vi抗原多糖体、注射により1回接種)が存在するが、日本では承認されていない。おもな副反応は、発熱、頭痛、接種局所での発赤、腫脹、疼痛である。個人輸入を取り扱う医療機関で接種する必要がある。
(2) コレラcholera
①病態・感染経路
水や食品を解して摂取された菌が小腸上皮で定着、増殖し、コレラ毒素が上皮細胞に作用して下痢を惹起する。
②症状
潜伏期は、数時間から5日(通常1日前後)で、水様性の下痢を主症状とする。水様性の便は1日数リットルから数十リットルに及び、嘔吐を伴うこともあり、大量の水分が失われる。半日から1日で著しい脱水状態となる。
③ワクチン
年間100例ほど見られるが、多くは海外渡航者による輸入例である。非経口ワクチン(不活化ワクチン)と経口ワクチン(弱毒生ワクチン、不活化ワクチン)が存在する。日本では、非経口ワクチンが用いられているが、効力、持続性の面で不十分であり、接種は勧められない。接種するのであれば、経口ワクチンを接種すべきであると考えられる。非経口ワクチンでは、接種局所での発赤、腫脹、発熱などがみられることがあり、経口ワクチンでは、腹痛や軟便を認めることがある。
参考文献
・内科学 第9版 朝倉書店
・ワクチンの事典 朝倉書店
・わかりやすい予防接種 改訂第3版 診断と治療社
・横浜市衛生研究所http://www.city.yokohama.jp/me/kenkou/eiken/idsc/disease/rota1.html
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