大曲先生の「感染症診療のロジック」を読む。
感染症のプロにとっては、目新しいことは何一つ書いていない。が、これは名著だ。
本書くらい、これまで大事に語られてきた言葉が適切な言葉で使われて文字になった例を知らない。青木先生の「マニュアル」すらしのぐほどの説明の丁寧さ、ロジックの綿密さである。想像だが、長い間静岡で多くのドクターと対話をつづけ、様々な異論、反論に応え、理論武装を重ね、そうした年輪が積み上がっていった結晶みたいなものが本になったのではないだろうか。僕にはとても、ここまで堅くロジックを積み重ねることはできない。こういうのは大曲先生でないとできない。
感染症の勉強を始めるには本書はとてもよい教科書だと思う。感染症のプロが本書を読むときには、とくに日本で診療をしている者が読むときには、自分が漠然と抱いているロジックを堅牢なものにするためのよりレベルの高いトレーニングとして用いると良いと思う。本書をうっかりさらっと読んで、「そんなことは俺は知っているよ」としたり顔で流してはだめなのである。
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