ずっとねちねち作っていた本がこの時期一気に出版される。何のことはない、学会に間に合わせるためにみんなぎりぎりこの時期なのです。
感染症関係の書籍はとても増えた。ので、類似の書物や特集も多く、ある意味生産性が問題になっている、と思う。ので、ターゲットオーディエンスと立ち位置を考える必要がある。この本は、誰のために、何のために役に立っているのか?ちまたの類書に加えるところのないme too bookではないのか?という検証が必要になる。 そう、教科書の考え方は、抗菌薬の考え方と同じなのである。
そのため、出版社からもってこられた企画でボツにしたことはけっこうある。「感染症の本を作りたいんですけど」くらいの相談だと、「青木先生の本以上のものを作るのは無理なので、やめときましょう」となるのだ。
今年、マンガを作ったが、あれは「感染症なんて興味がない、勉強もしたくない」人を、つまり青木先生の本は生涯、絶対に開かなそうな人をターゲットにした本。でも、そういう人でも抗菌薬は使うのです。ニーズは、そこにある。「あれでは足りない」という批判も受けたが、それは当たり前。ゼロよりは1のほう がまし、というコンセプトだから、そこは織り込み済みなのだ。あれ以上増やすと、「分厚い」と開かれなくなってしまい、1がゼロになってしまう。
まずは救急医学特集
傍から見ていると、救急医療の現場には格差社会がやってきているように思っていた。感染症に限定すると優秀な人はどんどん先へ進んでしまい、遅れた人は いつまでもウン十年前のまま。今回は、その遅れてしまった人をターゲットに書いています。したがって、ベーシックなまとめと陥りがちなピットフォールを集めたもの。僕はエディティングと「通常、抗菌薬を使わず治療する感染症」という項をまとめました。当たり前のことしか書いていないが、けっこう「目から鱗」とか言われてしまう。
つぎは、ガイドラインの総まとめ。
感染症診療ガイドライン 総まとめ 総合医学社
最近、「ガイドラインに書いてあるので」と言われて「あれ?」なプラクティスをよく見る。ガイドラインと言っても玉石混合。たとえば、感染症学会・化療 学会の抗菌薬のガイドラインはとても質が低い。アメリカの院内肺炎ガイドラインはそのまま日本では使いにくい。感染症にまつわるガイドラインを総集めし、 それを同じ視点で切って再評価した、ガイドラインの評価本。
これはけっこうがんばりました。アメリカのシークレットシリーズの感染症を訳したかったのだが、諸般の大人の事情でそれができず。ならば、自分たちで作っちゃえ、というのでこの本。
しかし、各執筆者がものすごい熱意で原稿書いてくれたので、本場のシークレットよりずっと良いものができてしまいました。これは自信を持って言える。各執筆者の皆さん、どうもありがとうございます。是非読んでね。これ、正直言って、英訳してアメリカで売りたいぞ。
英語版、ハングル版、中国語版、フランス語版などを出してもよい、という人はご連絡ください。
今年度の仕事はだいたい終わり。内田樹さんにはぜんぜんかなわないが、それなりにアウトプットも出せました。来年度は今年タネをまいた研究の刈り取りもやらねば。臨床試験、メタ分析、質的研究を同時進行で進めている。集中力がないので、同時進行でないと仕事できないのだ。あることに飽きたら、べつなことをやる。
まあ、所詮、なんちゃって研究者なので、空いた時間に、ついでにやる。他人に勝たなきゃ、科研費とらなきゃ、結果を出さなきゃ、みたいなのがないので、とても気楽。今あるリソースで、やりたくてできそうなことをやるだけ。僕にとっての研究はお勉強の延長線上にしかない。
さらに、one more thing,,,とリンゴ的コメントを残して、この項は終わり。ヒントはここに。
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