最近、何とかの力、みたいな本が多いですね。
ウコンの力じゃありませんよ。こういうふうに生きるのが正しい、という人生訓、生き方論です。
こういうふうに生きるのが正しい、という主張をするからには、その著者は「正しい生き方」をきちんと定義できていることになります。そして、ただしい生き方を生きている(と信じてる)。
しかし、このブログで再三再四検討しているように、「正しさの希求」そのものが危うい概念なので、正しさを主張すればするほど、その概念は誤っている、というパラドックスに陥っていきます。「こうしたら失敗した」というエピソードは役に立ちますが、「こうすれば正しい生き方」というのは規定できないのです。そういう意味では、なにわ金融道ってすごくいいマンガでした。
勝間和代さんの「お金は銀行に預けるな」は今でも良書だと思います。サブプライムのあとで「この本を読んで損をした、けしからん」と批判されることもあるそうですが、リスクを見据えてリテラシーをつけましょう、というのが本書の骨子なので、完全に見当違いな批判と言えましょう。たしか、その中で彼女は「これまでにこうやれば儲かるという株の本がありましたが、すべてインチキ。それはたまたまうまくいった自分のエピソードを書いただけで、汎用性があるわけではない」みたいなことをお書きになっていたと思います。成功のエピソードが正しさの証明ではない、というまっとうな御指摘です。
その彼女が、いま盛んに「何とかの力」の本を出しているのは、まことに皮肉な話に見えるのです。
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