普段、あまり使わない薬ですが、よい機会なので学生・研修医向けのレクチャー用にまとめました。
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+ カルバペネム
+ 属性
- グラム陽性菌
+ グラム陰性菌
- 緑膿菌も
- ESBLs, Amp-CもOK
- 嫌気性菌 fragilis, non-fragilis含む
+ どんな?
- イミペネム・シラスタチン
- パニペネム・ベタミプロン
- メロペネム
- ビアペネム
- ドリペネム
+ 歴史
- 1976年、土壌の放線菌、Streptococcus cattleyaからカルバペネム骨格をもちうチエナマイシン発見
+ 化学的に安定なイミペネムを創薬(メルク)
- 腎臓の分解酵素、デヒドロペプチダーゼI(DHP-1)に不安定
- GABAレセプターに結合するγアミノ酪酸に構造が似ているーー>中枢毒性
- シラスタチンを1:1の割合で配合。DHP-1を阻害
- IPM/CS チエナム誕生。1987年
+ 歴史
+ パニペネム・ベタミプロン(第一三共)
- PAPM/BP, カルベニン 1993年
- ベタミプロンは腎毒性を低減。1:1配合。近位尿細管上皮細胞への薬剤主成取り込み阻害作用。DHP-1阻害ではない
- 緑膿菌に対してはイミペネムより劣る
- MSSAや肺炎球菌ではイミペネムよりベター
- 髄膜炎に適応あり
- 韓国と中国でも用いている
+ 歴史
+ メロペネム(大日本住友)1995年
- 1β位にメチル基(以降のカルバペネムも同様)
- 抗緑膿菌、DHP−1安定性、中枢神経毒性軽減、生体内安定性
+ ビアペネム(ワイス開発、明治製菓発売)2002年
- 動物実験で腎毒性。効果も微妙
+ 歴史
+ ドリペネム(塩野義)2005年
- 基本構造はメロペネムに類似
+ その他
+ ertapenem 米国に
- 緑膿菌に効かないのが特徴
- 腹腔内感染に
- 1日1回投与可
+ その他
+ モノバクタム
+ アズトレオナム(アザクタム)
- 似て非なるもの。グラム陰性菌と同じ。スペクトラムはアミノグリコシド
- βラクタムアレルギーでも使える。例外はセフタジジム
+ 価格
+ イミペネム
+ チエナム
- 0.5g 1782-2150円
- 日本dose(1g)で3564-4300円 ただし上限2g
- 国際dose(2g)で7128-8600円
+ ジェネリック
- サンド株式会社 1353円(0.5g)
+ 価格
+ メロペネム
+ メロペン
- 0.5g 1650-2120円
- 日本dose(1g)で3300-4240円 上限2g
- 国際dose(3g)で9900-12720円
+ ジェネリック
- 日医工など1155円(0.5g)
+ 価格
+ ビアペネム
+ オメガシン
- 0.3g 1777-2218円
- 0.6g 3554-4436円 上限1.2g
- ジェネリック無し
+ 価格
+ パニペネム
+ カルベニン
- 0.5g 1693円
- 1g 3386円 上限2g
- ジェネリック無し
+ 価格
+ ドリペネム
+ フィニバックス
- 0.25g 1667円
- 日本dose 0.75g 5001円 上限1.5g
- 国際dose(1.5g) 10002円
- ジェネリック無し
+ 属性
+ 黄色ブドウ球菌
- IPM、PAPMがベター
- ただし、意味のない属性
+ 緑膿菌
- MEPM, DRPMがよいといわれる。臨床効果は不明
+ セフェムに比べエンドトキシンが出にくい in vitro
- in vivoでの意義は不明
+ 効かない菌
- Enterococcus
- MRSA
- MRSE
- Stenotrophomonas maltophilia
- MDRP
- intracellular organisms, Legionellaなど
+ 耐性機構
- influx pump欠損
- efflux pump過剰
- PBPs変異
- β−ラクタマーゼ(とくにメタロ)
- メロペネム耐性であれば、IPM, PAPM100%耐性
- イミペネム耐性でMEPM交叉耐性は41.8%, PAPM 98.7%
- パニペネム耐性ではMEPM交叉耐性23.7%, IPM 56.1%
+ 副作用
+ 中枢神経副作用
- イミペネムで多い。0.23%。MEPM 0.07%
- バルプロ酸との併用はバルプロ酸血中濃度を下げるため禁忌
+ 臨床利用
+ pubmedでclinical trial, English/Japaneseで検索
- imipenemで501件
- meropenemで196件
- panipenemで25件
- biapenemで29件
+ doripenemで11件
+ ただし、RCTにすると
- imipenemで215件
- meropenemで88件
+ panipenemで2件
+ 1件は高齢者の誤嚥性肺炎でクリンダマイシンと同等というスタディー
- Chest 2005;127:1276-
+ もう一つはFNでセフェピムと比較 非劣性
- Jpn J Clin Oncol 2008;38:49-
+ biapenemで1件
- IPM 500mgq8とbiapenem 500mg q8で比較 腹腔内感染 引き分け
- Sand J Infect Dis 1996;28:507-12
- doripenemで9件
- Generally speaking, doripenem, imipenem, and meropenem are therapeutically equivalent and interchangeable in most clinical situations.(Mandell)
+ 基本的には
- カルバペネムは非常に広域抗菌薬。ESBLやAmpCでもOK
- グラム陽性菌で用いる「必然性」はほとんどない。MRSAや腸球菌では避けた方がよい
- 院内のグラム陰性菌感染に特に有利
+ カルバペネムは基本的に1剤あればよい。岩田的には、
- biapenemはアウト
- imipenem/csも副作用から使いづらい。
- meropenem, panipenem, doripenemから1剤選択。
- 日本の保険適応の問題払拭が必要。適応疾患、投与量
- カルバペネム内のサイクリングは御法度
+ 参考
- Generic Medicine Information System
- www.ge-academy.org—top.php <http://www.ge-academy.org/GIS/top.php>
- 三鴨廣繁、山岸由佳 カルバペネム系抗菌薬の使い方 抗菌薬適正使用生涯教育テキスト 日本化学療法学会 2008 91-111
- Mandell et al. Principles and Practice of Infectious Diseases 7th ed. 2009
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コメント
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