昔はよかった、今の若い奴らは、、、とはいつの時代にも言われる常套句で、このペースで言うと、1000年前はとてつもなく優秀な人類だったとしか考えられない。そんなこと、ないけど。
僕が医学生だった時を振り返ればすぐ分かりますが、
絶対に今の学生の方が優秀
と断言できます。そうでない、と言う人は、たぶん美しい記憶ばかりが残っているのです。
凶悪犯罪も、交通事故死亡者も減り続けており、決して昔がよかったわけではない。これはデータを見ればすぐ分かることです。
ときに、沖縄県について気になっていたことがあります。長寿ナンバーワンの座を「他県」に奪われ、その原因として、
「昔の沖縄人は健康な食品を食べていた。今の食生活はアメリカ化して不健康。運動不足もあって」
と、さも「昔の沖縄人の方が今の沖縄人よりも健康だった」と言わんばかりです。
本当かな、と調べてみると、
桑江ら 沖縄県における平均寿命,年齢調整死亡率,年齢階級別死亡率の推移
(1973-2002) 沖縄県衛生環境研究所報 第40号 (2006)
www.eikanken-okinawa.jp/syoho/shoho40/image/121-128.pdf
これをみると、大正時代の沖縄県の平均寿命はなんと男性45歳、女性50歳くらいですよ。昭和50年で男性72歳、女性78歳、昭和55年で74歳、女性81歳、平成12年で男性77歳、女性86歳です。要するに、平均寿命は伸び続けています。
我々はすぐに「順位」を気にします。PISAとか医師国家試験合格率とか。でも、絶対的にどうなっているかという時間的推移と他者との比較をごちゃごちゃにして議論してはいけないのですね。要は、沖縄の人も長生きになっている。昔よりも長生きだけど、他の県の人がそれを追い抜いちゃった、というだけの話なのです。
もちろん、現代の食生活や運動が沖縄の人に影を落としている可能性はありますが、少なくとも、「昔の沖縄人は今のそれより健康」というのは全く無根拠なステートメントです。年齢調整死亡率についてはもっとあからさまで、例えば昭和50年の沖縄男性では957だったのが、平成7年には632です。沖縄の人は「死ににくく」なっているのです。
さて、我々の生きる目的は、「他人より」長生きをすることでしょうか。人と比較することでしか自分を規定できない人生は、哀しいものです。こないだ問題にした「嫉妬心」の仲良しの友達でもあります、こういうメンタリティーは。
まあ、この先の話は簡単にはいかないので、このへんで。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。