ちくま文庫版で10巻あります。分厚い文庫ですが、まあ分量ではそんなにむちゃくちゃ長い小説ではありません。長さでいうなら徳川家康とか、ゴルゴ13とか??の方が長いでしょう。
しかし、この文庫版を購入したのが大体10年くらい前で、やっと本日読了です。実は、第一巻を読み終えたのが今年になってから。何度も読み返しては挫折した第一巻のみはカバーも外れて書架でぼろぼろになっています。実際の長さよりも、その「くどさ」に辟易して止めてしまうのでしょう。彼女に逃げられて、それをくよくよ何百ページにもわたって反芻されてはたまらないのです。
ただ、今年になってから言葉に対する感性がやや高まった自覚があるのと、読むのが面倒くさいところはばっさり読むのを放棄し、まあ自分でダイジェスト版を作る覚悟を決めたらなんとか読了できました。それでも半年くらいかかりましたが、、、、
19世紀から20世紀にかけてのフランスやヨーロッパ社会について、その周辺の文学、音楽、絵画、哲学などの教養について、ドレフェス事件について、同性愛について(男女ともに)、サロン社会について、そして世界大戦(今でいう第一次世界大戦)などが横糸になって延々とダラダラした小説が続きます。話の筋よりもその文体と教養、当時の社会のあり方そのものを楽しむくらいの覚悟がないと面倒になります。そして、最終巻になって「時」について語られだし、一気に大団円、カタルシスと相成るのです。
ちょっと小話
第10巻 423ページ
ある人が、私の病気をつたえきいていて、いまインフルエンザがはやっているから、かからないようにするのがたいへんでしょう、と問いかけたので、べつの親切な男が、こういって私を安心させた、「いや、あれはまだ若い人間がかかるものです。あなたのお年ではもう大して心配はいりません」
そう、これは1918年のスペイン風邪のことなのでしょう。これもまた、失われた「時」が戻った瞬間というべきでしょうか。
コメント
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