流れの中で、本書を手にとったけれど、ちょっとこれはイマイチでした。こちらの感受性の鈍さのせいかもしれません。
出版されたのが1998年と古いことも影響しているでしょう。患者が阻害されている、というルサンチマンも今の目から見ると感覚としては古さを感じます(なくなってはいませんが)。臨床現場から阻害された「疾患」という実在物をみず、そのことを構造主義的にとらえる、というのは分かるのですが、それにしてもこの本は冗長に過ぎます。エッセイ集のような構成にも問題があるでしょうし、あとはやはりオールマイティー性には感覚的なはてな感がでてきます。実際の現場では物語っても上手くいかないことも多々ありますが、そういう制限を明示しておかないと、科学性や論理性が担保できないし、教条的、お題目的、きれい事的、そして実話という名のファンタジーにどうしてもなってしまいます。
ならば、本書のなかに示唆されていたようにむしろフィッツジェラルドやトルストイやドストエフスキーや大江健三郎や、村上春樹やチャンドラーやサリンジャーやプルーストを素直に読んだ方がNBMの体得には役に立つような気すらします。質の高いフィクションほどリアリティーの高い読み物はないのだから。
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