駆け込みで来年度の書類を作っています。4年生、5年生、6年生、初期研修、後期研修とそれぞれ一般目標だの、個別目標だのをたてるのですが、なんとも時間の無駄遣いです。
例えば、目標にはこんなことが書いてあります。
輸液の意味を十分に理解する。
あるいは、
緩和医療を定義できる。
こんな難しい命題、誰にも分からないし、第一学生がそれを達成できたのか、検証することも不可能です。「できていない」ことは検証できますが。
このようなオールマイティーな言葉は、何も言っていないのと同じなので、要するに第三者がのぞきに来たときに、「私は一所懸命書類を書きましたよ」というがんばりを証明するアリバイ作りにしかなっていません。がんばりそのものが評価の対象になるのは、アマチュアリズムに毒されているからです。そして、そんな空しいものだけが評価の対象になっている空しい作業をやっている指導医に教えてもらっている教え子が、正当に評価されるのでしょうか。そんなわけ、ない。少なくともプロはそんな無意味なことは、頼みにしない。
医師や医学生のめざすところは、到底到達できないところを、到達できないと知りつつめざし、かつそのことでニヒリズムに陥らず、適度にがんばり、適度に休み、適度に勉強し、適度に頭でっかちにならず、適度に患者さんに尽くし、でも患者さんや自分に溺れず、今の自分に満足せず、でも今の自分に絶望もせず、愛する人を大事にし、愛する人の方が患者さんよりも大切な存在である、という当たり前の事実を自覚しつつ、それでも患者中心の医療、というスローガンの「本当に」意味するところを認識し、偽善を憎み、でも偽善フリーはほぼありえないというかそれをいうのが一番偽善的と自覚し、大嘘つきにはならないが、ほどよく心のこもったウソをつき、他人の長所を手本とし、しかし醜い嫉妬心を起こさず、他人の短所は他山の石とし、しかしやはり愚かな優越の劣情を覚えず、理性を重んじ、同時に理性などというファンタジーを過信せず、正しい道を貫かんとしつつ、正しさってなあに?と首をかしげてこつこつ、うじうじ、どうにかこうにかがんばっていくこと。くらいでしょうか。こんなこと書類に書いても誰も許してくれませんが。
要するに何が言いたいかというと、年末の書類仕事がいやだな、ということでした。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。