以下の稟議書を出しました。もちろん、何も起きないかも知れません。でも、世間知に長けた評論家であるよりは、未来の価値を生み出そうともがく馬鹿者であることを選択したいのです。肩をすくめて訳知り顔で冷笑することは、だれにだってできる。
平成21年1月3日
日本化学療法学会様
神戸大学附属病院 感染症内科
岩田健太郎(公印略)
ピペラシリン添付文書改訂につき公知申請のお願い
拝啓 新春の候、みなさまにはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のお引き立てにあずかり、厚くお礼申し上げます。
さて、この度はペニシリン系抗菌薬、ペントシリン(注射用ピペラシリンナトリウム、大正富山医薬品株式会社)の添付文書改訂を希望しており、その手段として貴会を介した公知申請をお願いしたく、稟議書を認めた次第です。
ご存じのように2008年に同社からゾシン(タゾバクタム・ピペラシリン)が発売され、その最大投与量は海外諸国の事情、pharmacokinetics/pharmacodynamics(PK/PD)のデータを勘案してピペラシリン換算で1日16gとなっております。しかし、これに先んじて発売されているペントシリンの最大投与量は8gであり、その半量となっているのが現状です。ご承知のように諸外国ではペントシリンの最大投与量は16gとなっております。
通常、添付文書上の最大投与量を変更する場合は製造者の申請、臨床試験、承認というプロセスを要すると存じます。しかし、本件の場合、すでにゾシンにおいて最大投与量が正当に設定されているのですから、ペントシリンにおいてこのような経過をたどるのは理にかなっておりませんし、臨床試験に要するコスト、労働力、患者への負担を勘案すると倫理的とも申せません。
そこで、対案として厚生省健康政策局研究開発振興課長、厚生省医薬安全局審査管理課長が平成11年2月1日付に出した研第 4号、医薬審第 104号「適応外使用に係る医療用医薬品の取扱いについて」に準じ、貴会から医薬安全局審査管理課に公知申請相談を行うことを提案いたします。これにより、既存のデータで医療上必要と考えるペントシリンの最大投与量の変更の承認を得る可能性があると考えます。よろしくご審議たまわりますよう、お願い申し上げます。
我が国における抗菌薬の使用に関しましては様々な制約が生じており、薬理学的に整合性の低い投与法や投与量もその制約の一つであると私は考えております。臨床現場における感染症診療の質の向上のために、貴会のご尽力をぜひとも賜りますよう、ここにお願い申し上げる次第です。また、この公知申請が成功した暁には重要な前例を得ることが出来ますので、他の抗菌薬についても同様の戦略をとることが可能になります。その点からも、本件は日本の感染症診療上重要なものであると考えております。
なお、同様の稟議書を日本内科学会および日本感染症学会に提出しております。複数の関連学会が同じ方向を向いて大切な成果が得られることを心から希望する次第です。
敬具
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