金曜は愛媛の宇和島で講演、土曜日は広島で化学療法学会、日曜日は東京で性感染症学会でした。
学術集会は基本的に苦手なのですが、いろいろえるものはありました。
まず、化学療法学会。発表のレベルが玉石混合でした。佐賀の青木洋介先生のご発表はMRSA肺炎の妥当な診断を求めて尤度比を暫定的に計算したもので、非常に面白い取り組みだと思いました。ただ、化学療法学会で「尤度比」が十分に聴衆に理解されたかは、はなはだ疑問です。
座長をやっていて、いろいろ突っ込みどころは多かったのですが、ここは時間もおしていたのでさらっと流さざるをえませんでした。いいのかな、こんなことで。あと、多くの演者が時間を守らないのがとても気になりました。最低限のマナーですので、そこは守るべきでしょう。しゃべる人の都合ではなく、聴く人の都合で会は進行されるべきです。
性感染症学会は、IDATENとのコラボで自治医科大学の笹原先生、岩田のプレゼンの後、青木眞先生が座長で症例検討会でした。旭中央病院の中村先生、駒込病院のエース、柳沢先生、聖路加のチーフレジの森先生のご発表でした。青木先生の変わらぬするどいコメントもあってとても勉強になりました。笹原先生はプレゼン、とっても上手ですね。
このとき、性感染症学会が出した今年の新しいガイドラインを購入しました。CDC2006にならって症状に応じたアプローチをしていたのは好感がもてました。その一方で、執筆者による質の差があまりにひどすぎて、そこは問題でした。監修者の問題だと思います。
確かに、しゃんしゃんで終わりがちな日本の監修者は相手のプライドを傷つけないよういろいろ気を遣ったりして大変だと思います。でも、やはりガイドラインとしてこのようにまとめるのですからpeer reviewはきちんと機能していなければなりません。私も、監修していたある雑誌の特集の原稿を一回「ボツ」にしたことがあります。それは特集の趣旨とはあまりにかけ離れていた内容だったからで、やむを得なかったのでした。それは監修者の責務であり、それがする勇気を持たないようなら監修者たる資格はないと思います。
あと、やはりエビデンスレベルくらいは明示してほしかったです。学会員以外にはアクセスが悪いのも、日本の診療ガイドラインの相変わらずの欠点です。呼吸器学会の肺炎のガイドラインだけが、これを(そこそこ)うまくクリアしています。きちんと無料で誰でも(患者にも)読めるようにウェブ上で公開するのが、まっとうな医療者の態度だと思います。カネの論理が論理の全て、というアメリカですら、ちゃんと診療ガイドラインは無料で公開しているというのに。
それにしても、なんで同じ日に感染症関係の学会を3つもやるんだか全然理解できません。性感染症学会、感染症学会西日本大会、化療学会西日本大会。しかも、感染症と化療学会は同じ日、同じ場所で行われていたにもかかわらず「別々に」開催していました。愚行としか思えません。ただでさえ日本の感染症業界はヒトが少ないというのに、脚を引っ張り合って何が楽しいのでしょう。
そういえば、感染症学会の東日本大会もICAAC・IDSAと同時開催でした。何かが間違っているとしか思えません。こういうへんてこな判断をしている限り、日本の学術団体には未来はないのでしょう。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。