世界でもっとも感染症に対する考え方が進んでいる国の1つがオランダです。もっとも遅れているのが日本です。オランダの感染対策専門家である友人のテアダーハさんにマニュアルをみせてもらいました。2年も前に出来ているのにとてもよくできています。本当はすごく分量が多いのですが、病院関連の所だけ抜粋します。とても具体的なので分かりやすい。どこぞの国みたいに「臨床的に新型インフルエンザを疑ったら」みたいな意味不明な文言はいっさいなしです。骨子としては、パソジェンではなく患者で分ける、という考え方で、これは米国や香港もそういう流れだとIDSA/ICAAC総会のワークショップで言っていました。日本も健全な方向転換が出来るでしょうか。
新型インフルエンザ病院内対策案
2006年オランダRIVMガイドラインを参照
・ガイドラインは、実際の地域のアウトブレイクの有り様に応じて臨機応変に適応・修飾しなくてはならない。
・軽症例は入院の対象とならない。患者は家庭で可能な限りケアを受けるべきである。
・その場合、患者・家族には症状が増悪した場合の対応法を教えておく必要がある。具体的には、ただちに自らのかかりつけ医や地域の救急外来(あるいは発熱外来)に電話連絡するべきである。この場合、各医療機関はそのバックアップとしてインフルエンザ専門家のアドバイスを受けても良い。
・家族の状況は保健師などが十分に把握し、必要に応じて往診。
・ケアする家族が存在しない(独居)でも軽症であれば家庭で待機可能。症状が増悪した場合に入院の対象となる。かかりつけ医が入院の適否をアセスする。
・長期療養施設に入所中のものがインフルエンザに罹患した場合も必ずしも急性期病院に入院する必要はない。重症例、症状増悪時に入院とする。
・ベッドの空き具合に応じて入院の適応はその都度変更しても良い。
・ベッドが枯渇した場合は、入院の適否は専門家の判断にゆだねられる。その時は、地域でトリアージ委員会を作り、入院の適否を決定する。
・患者が将来重症化するかどうかを正確に予測することは不可能である。この前提でトリアージを行う。
・地域のトリアージ委員会は国の入院基準を遵守する。この入院基準は流行の程度に応じて刻々と変化させる。
・入院基準は以下の情報を参考にする。
市中肺炎のリスク因子はあるか、、、
患者の年齢、病歴、診察所見 脈拍125/分以上、呼吸数30回/分以上、収縮期血圧90mmHg以下、体温が35℃以下か40℃以上、意識障害(時、人、場所)など。
リスク因子:年齢、施設入居者、悪性疾患、心疾患、脳血管障害、腎疾患、肝疾患、
血液検査や画像所見の増悪インフルエンザのリスク因子はあるか
・65歳以上、妊婦、COPD、重篤な心疾患、腎疾患、免疫抑制療法、血液疾患、糖尿病、アスピリン服用者入院へのステップ
ステップ1 リスクを見積もること。電話か外来で。
・年齢 50歳以上ならグループ2−5
50歳より若ければグループ1 で、もし基礎疾患があれば、グループ2−5
診察上、上記の異常があればグループ2−5グループ1.50歳未満。基礎疾患なし。診察上上記の問題なし。臨床的に入院不要
ステップ2
血液検査、レントゲン写真グループ2:50歳以上、他にリスクなし 臨床症状増悪なければ入院不要
グループ3;年齢関係なく、リスク因子があるか、診察上の異常あるか、あるいは血液検査やレントゲン上でも少なくとも1つの異常あり。
臨床症状増悪なければ自宅療養。グループ4:年齢関係なく、2つ以上のリスク。臨床症状に応じて入院考慮
グループ5:50歳以上で、基礎疾患、診察、検査のいずれでも異常あり。入院。
予防措置
・ワクチンは有効だが数に限りがある
・抗ウイルス薬はパンデミックでなければ周囲への曝露後予防として使用可能
・パンデミックになれば抗ウイルス薬は患者の死亡を防ぐ治療薬として用い、予防的には使用しない。一般的な措置
患者へのアドバイス
・患者に近づくな
・自分がインフルエンザに罹患したら家でじっとしていなさい
・鼻と口をマスク、ティッシュ、ハンカチなどで覆いなさい。
・手洗いを励行
・自分の鼻や口をみだりに触らない。プライマリ・ケア
・パンデミック時も急性疾患には継続的に対応
・慢性的な問題はできるだけ先送り
・インフルエンザ様症状の初期対応はプライマリ・ケアのセッティングで
・インフルエンザ様症状のあるものと他の患者を区別する。待合室を共有しない。
・インフルエンザ様症状の患者が増加したらインフルエンザ様症状専用外来を設ける。入院患者
・インフルエンザコントロール/ケア施設を地域に設ける。その役割は
A 一般外来終了後のインフルエンザ様症状患者ケア
B 緊急時の対応と入院
C コールセンター。かかりつけ医からの相談を受ける。患者からの質問を受けても良いかも。一般的な質問はホームページか、録音電話サービスに回すという手も、、
D サーベイランス職員の枯渇
職員が枯渇した場合、医学生、看護学生、引退した医師や看護師、ボランティアに助力を求めることができる。
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