最近は、ipod touchで移動中に映画を見ることができてとても重宝します。見逃していた黒澤明の初期の映画の一つです。志村喬が酒に弱い赤ひげのプロトタイプみたいな医師を演じ、結核患者のやくざ役で三船敏郎です。彼の黒沢映画デビュー作です。
率直に言って、映画としてはあまり面白くありません。今の目から見ると芝居も大げさで、ドラマもわざとらしく、演出もそれほどでもない感じです。これは1948年の映画ですが、1949年の「第三の男」や、後の黒沢映画(例えば、岩田的には最高傑作の「用心棒」)と比べると、演出力の違いは歴然としています。ファンの方、ごめんなさい。
ただ、映画はおいておいて、戦後間もない日本の生活状況や、結核という疾患に対する考え方、風俗はとてもよく分かり、参考になります。ノンフィクションよりもフィクションの方が真実をきれいに訴えることがありますが、これなどは良い例だと思います。ノンフィクションでは分かりにくい当時の人間の結核観や医療観がよく伝わってきました。
「結核菌ってのはな、賢いばい菌なんだ!」
というような台詞を真田(志村)先生がおっしゃっていたのが印象的。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。