エンドトキシンは、グラム陰性菌が作るlipopolysaccharidesの一部を測定しています。ここはCD14やLPS結合たんぱくと複合体を作り、敗血症などの体内反応のカスケードの出発点となります。個々の調節が治療に結びつくこともあります。例えば、多剤耐性菌に時々用いるpolymyxin Bはエンドトキシンのlipid Aと結合してその毒性を抑えるそうです(青木先生のレジデントマニュアル第二版より)
というわけで、エンドトキシンそのものは感染症の領域においてきわめて重要な物質です。問題は、その測定が臨床的に意義があるか、です。
古来、エンドトキシンは感度・特異度が安定せず、炎症の度合いとも相関せず、バイオマーカーとしては有用ではないとされてきました。しかし、高感度エンドトキシンアッセイという全血を用いた検査は感度がよく、これは近年米国でも認可されています。そのため、グラム陰性菌の感染や敗血症に対するnegative predictive value,NPVが高いというデータが出ています。
Crit Care 2002;6:342-
JID 2004;190:527-
では、グラム陰性菌感染に対して、感度85.3%、特異度44%で、NPV98.6% 感染全体に対しては94.8%でした。ただし、患者予後とは相関せず、エンドトキシン値が高くても低くても臓器障害の程度やAPACHE IIレベルを予想はできませんでした。いずれにしても、陰性なら除外に有用であるかもしれないが、それ以外の何かがいえるわけではなさそうです。
さらに、この頁を読むと、日本におけるエンドトキシンの測定は欧米のものとは異なり、さらに偽陰性の問題もあるのだそうです。そうなってくると、エンドトキシン測定の意義はほとんど分からなくなってしまいます。国内での検査は2社がおこなっていますが、ここで分かります。
結局、これを測っても診断・治療に大きな影響は与えづらい、という気がしますが、皆さんはどう思いますか?280点のこの検査が、寄与するところはどの辺でしょう。
参考
Biomarkers of sepsis: clinically useful?
Current Opinion in Critical Care 2005;11:473-
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