まずはこんなケースから
「患者さんは67歳の男性。高血圧と脂質異常の既往あり。昨日夕食を食べているとき、急に左半身が動きにくいと救急搬送。CT、MRIにて脳梗塞と診断され、当科入院となりました。CRPが高かったので、感染症の合併を考え、抗生剤を、、、」
ちょい、またんかい(にわか関西弁習得中)。なんで脈絡もなく、そこでCRPが高値、、、って話になるの?全然話がつながらないんだけど。
「いや、測ったら高かったので、、、」
だから、どうして測ったの?
「どうして?いや、理由は特に」
ポイント
・検査にルーチンなし
そう、全ての検査には、オーダーするなら理由がなければいけません。CRPも然り。どこからどう見たって脳梗塞の患者さんで、とくに誤嚥を疑ったり、心内膜炎からの塞栓を疑ったりしているわけでもないのでしょ。そういうときは、CRPを測っても意味がないのです。CRPは非特異的なマーカーですから、急性疾患の患者さんで、けっこうチョロ上がりしています。こういうときに全例抗菌薬を出していたら、日本人の抗菌薬詰め、一丁上がり、ってやつです。「日本人の抗菌薬詰め」は某大学病院の名物料理といわれていますが、その実、船○○兆の鮎の塩焼きより食べられない代物です。
ポイント
・CRPは、理由がなければオーダーしてはいけない
・CRPが高いからといって感染症とは限らない。CRPが高いからといって抗菌薬が必要とは限らない。
CRPは役に立つか?という議論がよく行われますね。
私の尊敬する感染症医の一人はCRPはほとんど役に立たないと見向きもしません。別のやはり尊敬する感染症医はCRPをよく使う、とおっしゃっています。どちらが正しい、というのではなく、スタイル・スタンスの問題のようです。私は?私はCRPを使わなくても困りませんが、使っても別にいいや、ってかんじの両刀づかいです。前の病院では、
「岩田の前でCRPなんて一言言ったら雷落とされるぞ」
とかいうデマが回り、研修医が測っているCRPを隠そう隠そうと必死で努力していました。そこまでせんでええわい。測ったって別に罰は当たりません。
ただし、ちゃんと使えていれば、ね。
CRPは、車で例えるなら、
ドリンクホルダー
といったところでしょうか。別にあってもいけなくはないですが、なくてもちゃんと走れます。それなのに、多くの医師はドリンクホルダーをタイヤやブレーキやエンジンよりも大事にしているのです。
「わっ。タイヤが外れてますよ」
「いいんだよ、ドリンクホルダーはしっかりしてるだろ」
だと面白くもないジョークですが、
「先生、脈が150とタキッてます」
「でもCRPは落ち着いてるからなあ、すこし経過観察しようか」
は、ブラックな実話です。
ドリンクホルダーには、ドリンクホルダーとしてちゃんと仕事をしてもらいましょう。次回も、ドリンク、、、いや、CRPの使い方を解説していきます。
写真は祇園の街並み
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