以下の文章を次の三者に送りました。みなさんもぜひ積極的に発言しましょう。大事なのは傍観者にならず、自分にできることは小さいことでもやり続けることだと思います。
厚生労働省「国民の皆様の声」総診フォーム https://www-secure.mhlw.go.jp/getmail/getmail.html
田村憲久オフィシャルサイト [email protected]
財務省 予算執行ご意見箱 https://www2.mof.go.jp/enquete/yosan_opinion.html
田村憲久厚生労働大臣殿
神戸大学にて感染症を専門とする岩田健太郎と申します。
風疹についての質疑応答、拝見しました。すでに複数の先天性風疹症候群が発生している中、大臣の発言に失望された国民、親、医療関係者は多いです。ポリオの生ワクチンがワクチン関連ポリオの原因となり、これが不活化に切り替わるのに本当に長い年月を必要としました。厚労省がビジョンを持たず、目的を明白にせず、財務省など諸団体との調整ゲームばかりを政治と勘違いしていたからです。そのような政治ゲームに秀でているだけで日本の政治を回しているから「政治が三流」と揶揄されるのです。
予防できる先天奇形を看過しないこと、妊婦が不要な不安を強いられない社会を作ること。それこそが厚労省が目指すべきビジョンではないでしょうか。大臣が描いている日本の将来像とはどういうものなのでしょうか。
日本における風疹の流行は国際的にも非難の対象となり、キャッチアップワクチンの制度が整備されていない日本は「非常識である」と専門家からも批判されています。中国が迅速なインフルエンザH7N9対策で国際的な称賛を受けたのとは実に対照的です。
http://www.promedmail.org/direct.php?id=20130604.1754725
すでに多くの領域で日本は韓国や中国、その他のアジア諸国にも遅れを取っていますが、予防接種政策はとりわけ「遅れている」領域です。中国はB型肝炎蔓延国として批判されてきましたが、ユニバーサルワクチンを導入してこれを減らすことを見込んでいます。台湾では予防接種のお陰で肝細胞癌がすでに減少しています。
日本ではB型肝炎、A型肝炎、水痘、帯状疱疹、ロタウイルス、青少年・成人の百日咳など多くの「ワクチンで予防できる感染症」が放置されています。その意味では大臣の言う「他にも大事な感染症がある」は事実です。しかし、こうした感染症もずっと放置してきたのが日本という国であり、厚労省です。アメリカはすでに臨床試験で水痘ワクチンによる死亡者を減らすことをしめし、ずっと前にこれを定期接種化しています。毎年保育園や幼稚園で水痘アウトブレイクを起こして知らん顔の日本とは大きな違いです。他の感染症対策をしっかりやっているのだから、風疹はチョット待ってくれ、というならまだ話の筋はありますが(あまり納得はしませんが)、「ほかもほったらかし、風疹も同じくほったらかし」ではどうしようもありません。
予防接種の政策を財務省の「都合」から切り離し、厚労省の「やっつけ仕事」から切り離すのが、あるべき政治です。それが日本版ACIPという議論だったはずです。2009年のインフルエンザで議論された教訓が全く生かされていません。何度同じ失敗を繰り返せば、学習効果が得られるのでしょうか。
大臣の政治家としての見識、日本国に対する優れたビジョンを、具現化されるよう、期待してやみません。
岩田健太郎
神戸大学都市安全研究センター感染症リスクコミュニケーション分野
神戸大学医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野
神戸大学医学部附属病院感染症内科
神戸大学医学部附属病院国際診療部
〒650-0017 神戸市中央区楠町7丁目5−1
TEL 078-382-6296
FAX 078-382-6298
Kentaro Iwata, MD, MSc, FACP, FIDSA
Professor
Infectious Diseases Risk Communication
Research Center for Urban Safety and Security
Infectious Diseases Therapeutics
Kobe University Graduate School of Medicine
Chief, Division of Infectious Diseases
Chief, Division of International Healthcare
Kobe University Hospital
Kusunokicho 7-5-2, Chuoku
Kobe, Hyogo, Japan
650-0017
tel +81-78-382-6296
fax +81-78-382-6298
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