蜂窩織炎患者の血液培養陽性に影響する因子、背景には何があるか
【序論】
XXX現在蜂窩織炎の血液培養陽性率は10%に満たないとされており1)、決して高いとはいえない。そこで血液培養陽性に影響する因子、背景には何があるのかについて調べた。
【本論】
F.V. van Daalenらが行った3施設での皮膚軟部組織感染症患者の後ろ向き研究2)によれば、334人中258人(77%)が蜂窩織炎であり、そのうち153人(59%)に血液培養が行われ、23人(15%)が陽性、258人のうち189人(42%)が丹毒であった。この研究では、高齢であるほど血液培養陽性率が有意に高く、並存する疾患(糖尿病など)が重度であるほど陽性率が有意に高いことが示されていた。
また、Mika Halavaarらが行った、深部まで及ぶ皮膚軟部組織感染症の血液培養陽性因子を検討した論文3)では、460人の皮膚軟部組織感染症患者で培養を受けたのは258人(56.1%)、陽性は61人(23.6%)であった。培養検査を施行した要因には糖尿病、急性発症(2日以内)、CRP高値が、施行しなかった要因には末梢血管障害と手術創感染が挙げられていた。血液培養陽性に関連する要因はアルコールの多飲のみで、他に有意な因子は示されなかった。
【結論】
以上二つの論文を参照し、蜂窩織炎患者の血液培養検査は序論で述べた陽性率よりも高いことが示唆され、因子としては高齢であること、並存疾患の重症度、アルコール多飲であることが挙げられる。
しかし、どちらの論文も感染の深度を明確にした分析ではなく、今回の疑問を考察する上で十分に網羅しているとはいえないと考えられる。血液培養の実施は医師の判断で決定され、米国感染症協会(IDSA)のガイドラインでは蜂窩織炎と丹毒の患者における血液培養の通例の実施を推奨していないため、検査が行われた症例の中で比較し、陽性率を高める因子を正確に判別することは難しいといえる。今回の疑問を解決するためには、蜂窩織炎患者の全例で血液培養を実施し、陽性率と感染の深度や患者背景を比較した研究がなされることが必要と考えられる。
(参考文献)
- Up To Date; Cellulitis and skin abscess: Clinical manifestations and diagnosis
- V. van Daalen et al,Eur J Clin Microbiol Infect Dis.2017;36(10):1853-1858
- H et al,Eur J Clin Microbiol Infect Dis.2019;38(7):1351-1357
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