「MRSA肺炎に対してバンコマイシンを投与した場合とリネゾリドを投与した場合でどれくらい生命予後に差があるか。」
<序論>
日本化学療法学会・日本感染症学会MRSA感染症の治療ガイドラインによるとMRSA肺炎の治療には、第一選択薬としてリネゾリド(LZD)(推奨レベルA-I)もしくはバンコマイシン(VCM)(推奨レベルA-I)、テイコプラニン(TEIC)(推奨レベルA-II)を選択するとされている[1]が、リネゾリドとバンコマイシンでどれくらい生命予後に差があるかということを考えるにあたり、両者の臨床効果を比較した。
<本論>
Kelly R. Revelesらによると2002年度から2007年度までの間に入院した65歳以上の医療関連肺炎(HCAP)の患者の中で、バンコマイシンによる治療を行なった群(n=946)とリネゾリドによる治療を行った群(n=265)を30日死亡率、60日死亡率、90日死亡率で比較したところ、それぞれ25.7%:12.5%(OR 2.56,95%CL 1.67-4.04)、35.5%:18.1%(OR 2.58,95%CL 1.78-3.82)、42.2%:21.9%(OR 2.71,95%CL 1.90-3.92)となっており、30日死亡率、60日死亡率、90日死亡率に関してリネゾリド群に比べてバンコマイシン群は死亡率が有意に高かった。[2]
また、Hiroaki Takadaらによると、65歳以上でMRSA肺炎の確定診断で入院し、2010/11/1から2015/5/31の間にリネゾリドによる治療を行った群(n=11)とバンコマイシンによる治療を行った群(n=17)を30日死亡率で比較したところ、0%:41%(P=0.02)であり、リネゾリド群に比べてバンコマイシン群は30日死亡率が有意に高かった。[3]
<結論>
MRSA肺炎ではリネゾリドに比べてバンコマイシンによる治療後の死亡率が有意に高かったと結論づけられる。しかし、今回論文検討できたのは高齢の院内MRSA肺炎のみであり、比較的若年のMRSA肺炎患者や市中型MRSA肺炎についてこの結論を当てはめるのは妥当でないと考える。また、今回受け持った患者さんはMRSA肺炎に対してバンコマイシンの投与を行っているが、なぜリネゾリドの投与ではなくバンコマイシンの投与としているのかについては分からなかった。
[1] 日本化学療法学会・日本感染症学会 MRSA感染症の治療ガイドライン2017;32-38
[2]Reveles, Kelly R., Eric M. Mortensen, Russell T. Attridge,Christopher R. Frei. Comparative-effectiveness of vancomycin and linezolid as part of guideline-recommended empiric therapy for healthcare-associated pneumonia. BMC Research Notes 2015;8:450
[3]Takada, Hiroaki, Toru Hifumi, Naoki Nishimoto, etal. Linezolid versus Vancomycin for Nosocomial Pneumonia Due to Methicillin-Resistant Staphylococcus Aureus in the Elderly: A Retrospective Cohort Analysis: Effectiveness of Linezolid in the Elderly. The American Journal of Emergency Medicine 2017;35, no. 2: 245–48
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