注意! これは神戸大学病院医学部生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。
学生に与えられたレポート作成時間は総計5時間。月曜日に「質問形式」のテーマを考え、岩田が審査し、そのテーマが妥当と判断された時点からレポート作成スタート、火曜日のお昼まで、5時間かけてレポート作成します。水曜日などに岩田がこれに講評を加えています。2019年2月11日よりこのルールに改めました。
あくまでも学生レポートという目的のために作ったものですから、間違いもありますし、個別の患者には使えません。レポートの内容を臨床現場で「そのまま」応用するのは厳に慎んでください。
ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
敗血症性関節炎の診断においてPCR & MicrocalorimetryとSF培養ではどちらが有利か。
Up-to-dateによると、敗血症性関節炎の確定診断はSF培養が唯一の手段とされ、SF培養は陰性だが敗血症性関節炎を強く疑う時にPCRやMALDi-TOPが補助的に用いられる。
またさらに微生物を迅速に検出できる新しい方法としてMicrocalorimetryがあるが、これらを比較して敗血症性関節炎の確定診断に最も有用な検査方法を考えたい。
Lallemand Eらの研究ではSF培養とMALDi-TOF MS、PCRの3つを比較しているが、感度はSF培養で85,9%、PCR、MALDi-TOF MSでそれぞれ29.6%と7.4%、特異度はSF培養は74.5%で他二つは100%であった。
またYusuf Eらの研究によると, Microcalorimetryの感度は89%、特異度は99%であった。
Morgenstern Christianらの研究によると敗血症性関節炎患者22人の内SF培養とMicrocalorimetryでは10人(45%)PCRでは6人(27%)の患者で陽性であり、PCRとMicrocalorimetryの併用で12人(55%)の患者で陽性であった。
また検査時間の中央値はSF培養で4.5日、PCRで5時間、マイクロカロリメトリーで8.8時間であった。
三つの研究から得られる結果としてMicrocalorimetryはそれ単独でもSF培養に比べて感度、特異度ともに高く検査所要時間も短いのでMicrocalorimetryが最も優れた検査方法であるといえるが、Morgenstern Christianらの研究からPCRを補助的に用いることでその感度を補完することができる。
引用出典:
1. Yusuf E, Hügle T, Daikeler T, Voide C, Borens O, Trampuz A. The potential use of microcalorimetry in rapid differentiation between septic arthritis and other causes of arthritis,. European journal of clinical microbiology & infectious diseases : official publication of the European Society of Clinical Microbiology, 2015Mar01, Vol. 34, issue(3)
2., , , , , MALDI-TOF MS performance compared to direct examination, culture, and 16S rDNA PCR for the rapid diagnosis of bone and joint infections. European Journal of Clinical Microbiology & Infectious Diseases, May 2016, Volume 35, Issue 5, pp 857–866
3. , , , and Multiplex Polymerase Chain Reaction and Microcalorimetry in Synovial Fluid: Can Pathogen-based Detection Assays Improve the Diagnosis of Septic Arthritis?. The Journal of Rheumatology November 2018, 45 (11) 1588-1593; DOI: https://doi.org/10.3899/jrheum.180311
4. Don L Goldenberg, MD, Daniel J Sexton, MD. Septic arthritis in adults. last updated: Jan 24, 2019.
診断問題は感度、特異度の問題となります。数字に慣れましょう。診断問題を雑に扱わないのは大切です。あまりに雑に検査は扱われてますから、日本の医療現場では。
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