注意! これは神戸大学病院医学部生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。
学生に与えられたレポート作成時間は総計5時間。月曜日に「質問形式」のテーマを考え、岩田が審査し、そのテーマが妥当と判断された時点からレポート作成スタート、火曜日のお昼まで、5時間かけてレポート作成します。水曜日などに岩田がこれに講評を加えています。2019年2月11日よりこのルールに改めました。
あくまでも学生レポートという目的のために作ったものですから、間違いもありますし、個別の患者には使えません。レポートの内容を臨床現場で「そのまま」応用するのは厳に慎んでください。
ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
原発性インフルエンザウイルス肺炎とインフルエンザ関連細菌性肺炎の鑑別はどのようにして行うのか
今回の実習の担当患者はインフルエンザ後の重症肺炎であった。インフルエンザ肺炎は1957年のパンデミック(Asian-influenza)での剖検例より、実際の肺炎部位にインフルエンザウイルスのみが感染している原発性インフルエンザ肺炎、ウイルスと細菌が感染している混合性肺炎、細菌感染のみの二次性細菌性肺炎の3病型に分類された。それらの鑑別は臨床ではどのようにして行うのか検討した。
Louriaらは1957~1958のニューヨークの病院で発症したアジアかぜの33症例を、X線写真で異常を認めない細気管支炎の3人のインフルエンザ患者、細菌性肺炎を合併した15人のインフルエンザ患者、原発性インフルエンザウイルス肺炎の6人の患者、同時性インフルエンザウイルス・細菌性肺炎の9人の患者、の4つのグループに分けている。それぞれに細菌培養とウイルス分離を行ったところ、3人の患者では細菌培養は常在菌のみ、ウイルス分離は1例のみ分離した。15人の患者では細菌培養で肺炎球菌 8 例、ブドウ球菌 6 例、インフルエンザ桿菌 6 例などで、ウイルス分離は0例。6人の患者では4 例で少数の肺炎球菌を、2 例で少数のインフルエンザ桿菌を認めるも常在細菌が主体で、ウイルス分離は分離を試みた4例中3例で分離した。9人の患者では細菌培養では肺炎球菌 6 例、ブドウ球菌 6 例、インフルエンザ桿菌 4 例などでウイルス分離は9例中7例で分離した。
埼玉県立循環器・呼吸器病センター呼吸器内科(現 埼玉医科大学呼吸器内科)の研究グループでは以下の通り病型分類を行った。インフルエンザ症状に引き続いて解熱することなく肺炎を発症した症例で迅速診断キットまたは抗体価の推移によりインフルエンザウイルスの関与は証明されたが、喀痰検査で有意菌が検出されず、尿中抗原(肺炎球菌、レジオネラ菌)陰性で肺炎マイコプラズマ・肺炎クラミジア・オウム病・レジオネラ抗体の上昇がなかった場合に原発性インフルエンザウイルス肺炎と診断した。インフルエンザの発熱が改善した後に肺炎を発症した症例で迅速診断キットまたは抗体価の推移によるインフルエンザウイルスの証明に加え、喀痰・尿中抗原・抗体価の推移などより他の原因微生物が検出された場合に二次性細菌性肺炎と診断した。インフルエンザ症状に引き続き肺炎を発症した症例で、インフルエンザウイルスの証明に加え、喀痰・尿中抗原・抗体価の推移などより他の原因微生物も証明された場合にウイルス・細菌混合性肺炎とした。喀痰検査などの原因微生物検査が不十分であった症例は分類不能型肺炎とした。
よって、臨床でのインフルエンザ肺炎の病型分類は肺炎がインフルエンザウイルス症状の改善後かどうかと、各種検査による原因微生物の検出の有無によって行うことができる。
(参考文献)
1) Louria DB, Blumenfeld HL, Ellis JT, et al. Studies on influenza in the pandemic of 1957–1958. Pulmonary complications of influenza. J Clin Invest 1959;3: 213―265.
2) Noboru Takayanagi, Kenichiro Hara, Daidou Tokunaga, Takako Kato, Minoru Kanazawa, Hiroo Saito, Mikio Ubukata, Kazuyoshi Kurashima Tsutomu Yanagisawa, and Yutaka Sugita. Department of Respiratory Medicine, Saitama Cardiovascular and Respiratory Center Department of Respiratory Medicine, Saitama Medical School Clinical features and outcome in 84 patients with influenza pneumonia. 日呼吸会誌 44(10),2006:681-688
分類とは恣意的な営為であることを学びました。この問題、とてもむずかしいですね。分類の主張は科学的真理を導かないのです。
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