注意! これは神戸大学病院医学部生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員がスーパーバイズしています。そして本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。
学生に与えられたレポート作成時間は総計5時間。月曜日に「質問形式」のテーマを考え、岩田が審査し、そのテーマが妥当と判断された時点からレポート作成スタート、5時間以内に作成できなければ未完成、完成して掲載レベルであればブログに掲載としています。お尻に岩田が「寸評」を加えています。
あくまでも学生レポートという目的のために作ったものですから、レポートの内容を臨床現場で「そのまま」応用するのは厳に慎んでください。
ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
感染症レポート
CVの定期的な交換はCRBSIのリスクを減らすのか?
CV(中心静脈カテーテル)は、主にICU(集中治療室)の重症患者など、経口摂取や経腸栄養ができない、もしくは末梢静脈が確保できない患者に対して使用される。合併症としてCRBSI(カテーテル関連血流感染)があるが、事前にCVの定期的な交換を行うことによってCRBSIの感染率を下げることができるのか疑問に思い、今回は留置期間・留置部位の二つの側面から考察した。
STEVEN EYERらの研究1)では、112人の患者を対象に、カテーテルをa)7日毎に新しい部位で交換するPERC群:32人、b)臨床的に問題がなければ何もしないNWC群:39人c)ガイドワイヤーを用いて同じ部位で交換するGWX群:41人、の3つグループに分けて前向きランダム化比較試験を行った。(10名は除外された。)その結果、感染の発生率はCRSのエピソード/患者数がPERCで0.22、NWCで0.16、GWXで0.17であった。
ガイドワイヤーまたは新しい部位でのカテーテル置換の12の無作為化試験2)では、同じ長さのカテーテル(2日、3日、7日、または必要に応じて交換または交換)にカテーテルを植え付ける際のガイドワイヤー交換と新部位置換の影響を評価しているが、3日毎の交換と7日毎の交換で比較した場合で有意差は認められていない。また、新しい部位置換と比較して、ガイドワイヤー交換は、カテーテルへの細菌定着率が高く(相対リスク1.26,95%信頼区間0.87〜1.84)、カテーテル出口部位感染(相対リスク1.52,95%信頼区間0.34〜6.73)およびカテーテル関連菌血症(相対リスク1.72,95%信頼区間0.89〜3.33)も随伴する。しかし、新しい部位交換と比較して、機械的合併症のリスクは低い(相対リスク0.48,95%信頼区間0.12〜1.91)。
結論として、CVの定期交換はCRBSIの予防に対して有効性は乏しいと考えた。
また、ガイドワイヤー交換は、カテーテル関連感染のリスクが高いが、新しい部位置換よりも機械的合併症が少ない。新しい部位置換によるコストを考えると、厳密な感染対策のもと同じ部位でガイドワイヤーを用いた交換ができればベターである。しかし、これらの研究では、等しく比較できていない点がいくつかあり、等しく無菌状態を保って交換ができていない点、そもそも感染の原因である細菌が異なる点、カテーテルの寿命または病気の重篤度を分析できていない点などがあげられる。今回は確実なデータを得られたとは言い難いが、ガイドラインにあるように臨床的必要性に基づいて交換頻度を決めることが必要だと考えた。
【参考文献】
1)Catheter-related sepsis:Prospective,randomized study of three methods of long-term catheter maintenance
STEVEN EYER,MD;CHARLES BRUMMITT,MD;KENT CROSSLEY,MD:ROBERT SIEGEL,MD;FRANK CERRA,MD
2)Central venous catheter replacement strategies: A systematic review of the literature Cook, Deborah MD, FRCPC, MSc(Epid); Randolph, Adrienne MD, MSc; Kernerman, Phillip MD; Cupido, Cynthia MD; King, Derek BMath; Soukup, Clara MD; Brun-Buisson, Christian MD
寸評:95%信頼区間、がわかっていなかったのでトンチンカンになりましたが、勉強になってよかったのでは。
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