注意! これは神戸大学病院医学部生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員がスーパーバイズしています。そして本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。
学生に与えられたレポート作成時間は総計5時間。月曜日に「質問形式」のテーマを考え、岩田が審査し、そのテーマが妥当と判断された時点からレポート作成スタート、5時間以内に作成できなければ未完成、完成して掲載レベルであればブログに掲載としています。お尻に岩田が「寸評」を加えています。
あくまでも学生レポートという目的のために作ったものですから、レポートの内容を臨床現場で「そのまま」応用するのは厳に慎んでください。
ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
異物を誤飲した際に穿孔が起こりやすい部位はどこか、またその予後に違いがあるか
異物を誤飲してしまった際に消化管系において穿孔を起こす場合がありその頻度と予後について調べてみた。異物と一概に言っても色々なものがあるので今回は先端が尖ったもの、魚骨、鳥骨などあるが、今回は爪楊枝に焦点を置いて調べた。
異物誤飲は成人では、無歯、アルコール中毒者、高齢者や精神疾患の人が起こしやすく、症状は異物が刺さった場所に大きく依存される。異物を誤飲した際の体の中に飲み込んだ異物が穿孔を起こす場合は、爪楊枝に関しては1984年のアメリカのCPSCNICのレポートによると、0.2/100であった。[1]消化管内に刺さった爪楊枝の位置は、食道が2%、胃が20%、十二指腸が23%、小腸が18%、大腸が37%だった。[2]また違う研究で、2013年の136の症例によると、誤飲した爪楊枝による穿孔の位置は胃の幽門が20%、十二指腸が23%、回盲部が9%とS状結腸が16%であった。[1]また異物誤飲による穿孔の一番の原因物質は、46%の動物の骨が一番多いという報告もされていた[4]
異物誤飲により消化管の領域で穿孔が起こった際、手術前の診断は原因不明の外科的腹症となることが多い。また穿孔を起こしたすべての患者に腹腔内汚染があり、66.7%に汎発性腹膜炎を認めた。臨床症状では、異物が刺さる場所によっては、腹膜炎、腹部の膿瘍形成、腸膀胱瘻、腸閉塞と胃腸出血,[3]、心嚢液貯留、心タンポナーデ、肝膿瘍、十二指腸腎臓瘻[4]など起こったという症例も報告されている。刺さる場所、穿孔が起こっているかどうかで内視鏡手術、腹腔鏡手術、開腹手術まで変わってくるが[1]、それぞれの手術率や、死亡率を調べることはできなかった。
結論として爪楊枝を誤飲してしまった際の穿孔が起こりやすい場所は消化管の狭い部分である幽門と回盲部、解剖学的に曲がり角がある十二指腸とS状結腸に多いことが分かった。異物により穿孔が起こった場所によっては、近くの脈管構造に加えて、その近くの臓器に異変が起こってないか注意する必要があり治療方針も変わってくることが分かった。
・参考文献
[1] Gastrointestinal perforation secondary to accidental ingestion of toothpicks: A series case report. Yang Z1, Wu D, Xiong D, Li Y.
[2] Successful diagnosis and treatment of ingested wooden toothpicks: Two case reports.
Lin N1,2, Lin L3, Wu W1,2, Yang W1,2, Cai Z3, Hong J3, Wang Y1,2.
[3] Intra-abdominal abscess caused by toothpick injury
Yu-JangSuabcYen-ChunLaibdChang-ChihChenaeChinTangf
[4] Problems of diagnosis and treatment caused by ingested foreign bodies.
Mesina C1, Vasile I, Valcea DI, Pasalega M, Calota F, Paranescu H, Dumitrescu T, Mirea C, Mogoanta S.
寸評:直接指導できなくてすみません。面白かったです。よい命題でした。ときに、魚の骨のデータってあんまないですね。研究の萌芽だと思いました。
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